第122回  (2013年05月)  「たまには贅沢しちゃってもいいんです・・・」

こんにちは。柴田美容皮膚科クリニックの柴田です。最近はようやく暖かくなってきたと思ったらまた少し寒い日があったり、季節の変わり目は洋服選びも大変になりますよね。さすがにロングコートは出さなくなりましたが、出勤の時はそれなりに暖かかったのに、帰る頃になるとすっかり寒くてコート着てくれば良かった・・・って思う事も。(私の場合は帰りが深夜になる事が多いからかもしれませんが・・・。)最近は毎年、異常気象だと言われてますよね。地球温暖化が進んでると思えばすごく寒い冬だったり、そうかと思えば今年は観測史上最も早い桜の開花だったという話も聞きます。この異常気象というのは世界的な傾向だそうで、二酸化炭素の濃度が上がっている事が原因って言う人もいれば、地球の中でマグマが動いて地殻変動が起きているからだって言う人もいます。(この学派の人達に言わせると、温暖化の後には氷河期が来るのだとか・・・。)ノストラダムスの大予言が当たらなくて良かったと思ったのもつかの間、新たな不安に人類は常に悩まされ続けていくのでしょうね。 ただ、地球環境も変化すると、人間もそれに合わせて柔軟に対応しようとするみたいです。夜と昼で温度差が極端になってきていますが、私もユニクロのウルトラ・ライトダウンで対抗しています。持っておられる方も多いと思いますが、あれは凄いですねぇ。とっても軽くて暖かいだけでなく、ぐるぐる丸めてポーチの中に押し込むと、いくらでも小さくなってショルダーバッグの中にでも入ってしまいます。暖かい日中はカバンの中に入れておき、寒くなったら取り出して着ることができるなんてとっても便利です。(どこかでユニクロの人がこの通信を見てくれて「宣伝のお礼です!」って来年の分もプレゼントしてくれないかなぁ・・・(^^)。)これのお陰で海外旅行の荷造りもホントに便利になりました。微妙な季節に海外旅行に行くと、コートを持って行くのかどうかでかなり荷物の大きさが違ってしまいますよね。荷物は減らしたいけど、もし寒くて凍えるような事になったら嫌だし・・・。そんな時念の為に持って行くのも、これだったら苦になりません。おまけに最近のスーツケースの進化はもっと凄い。軽くて丈夫な上に色々な工夫がされています。トップオープンっていうのは、スーツケースを立てて運んでいる最中でも、スーツケース全体を開けることなく上部をジッパーで開けて中身を取り出したりできますし、上に座っても大丈夫なシットオンっていうのも出ています。 そんな訳で今月はトップオープンのスーツケースにウルトラ・ライトダウンを詰めて、ヨーロッパの国際学会に出席してきました。今回の学会開催地は、世界で二番目に小さな国であるモナコです。モナコと言えばグレース・ケリーが嫁いだ国として有名で、所得税がゼロのためか世界中のお金持ちが集まっています。(日本人ではサッカーの中田英寿さんもモナコに邸宅を構え、モナコの市民権を得ているらしい。)そんなお金持ちの国なので、今更ですがなんせ物価が高い!! タクシーからレストランからホテルまで・・・。ホテルなんかも一泊十何万円(時には何十万円)の高級ホテルばかりだし、国際学会ともなればかなり前からリーズナブルなホテルは押さえられているから、一般の参加者はとっても大変、と思いきや・・・ヨーロッパからの参加者はお近くのニースに泊まって学会にはレンタカーで来たりしているので、彼らにとっては意外と便利な場所みたいです。しかし私はモナコは初めてだし、そんなお金持ちの国に馴染みがある訳もなく、レンタカーの運転なんてとんでもないので、まずは格安航空券を押えてリーズナブルなホテルを探すだけでも大変でした。しかも今回の学会は前回の通信にも登場したスタッフのコロコロS君を同行させる予定でした。私にすれば日頃色々と大変な思いをさせているので、若い頃にこんな経験ができれば喜ぶだろうし連れて行ってやろう、という気持ちだったのですが、彼が直前になってなんだかプチ鬱状態・・・。心配して聞いてみると、 「すいません・・・。実は僕、日本食しか食べれないんです・・・」とまさかのカミングアウト。 柴田:「え?? あんた何歳? まだ26歳ちゃうん? 洋食食べられへんの?」 S君:「はい・・・ダメなんです。フランス料理とかイタリアンとか全然ダメなんで、     インスタントのカップ麺とか味噌汁とか、サトウのご飯とか持って行くつもり なんですけど、毎日そんなの1週間も食べ続けると思うと・・・m(__)m」 柴田:「あちゃぁ・・・。お前はジジイかぁ! 年ごまかしてるやろ。ほんまは46歳、 いや64歳ちゃうん?」 そう言えばクリニックの食事会でもS君は和食しか食べてないし、居酒屋に行くといつもいきなり「日本酒と漬盛(漬物盛り合わせ)お願い!」って言ってたな。まぁ・・・私も旅先で食べ物が合わない時の苦痛は判るので、代わりに韓流B君に声をかけると、これは打って変わって「へぇ!ホントですか!?僕が同行していいんですか!? 行きます!行きます!!」ともう大喜びです。(なんだか私も嬉しくなったり、年取ると若者の喜ぶ顔が妙に嬉しくなるもんだなぁ・・・なんて神妙な気持ちになったり・・・)とそんな訳で、直前に飛行機の搭乗者を変更した為、ただでさえ安くない飛行機代が更に5万円アップ。(はぁ・・・ホントに下世話な話ですいません・・・^^;)もうこうなったら今回だけは贅沢してやる!!って事で、モナコやニースのグルメレストランと美容スパをさっそく検索です。(ま・・・旅先のグルメはいつもの事ですが、学会の準備と称してかなりの時間をレストラン検索に費やしてしまった自分が今となっては情けない・・・^^;) 以前のクリニック通信でも書きましたが、開業医をしているとほぼ一日中クリニックの中で過ごすので、外の世界と接する時間が殆どありません。勤務医の頃は製薬会社などの営業の方が勉強会を開催してくれたりもしましたが、開業するとなかなか参加もできないし、保険診療が中心の日本では美容の情報はかなり遅れているので、世界の最先端の情報を入手しようとすると、このような国際学会に出かけていかねばなりません。学会参加の為にはクリニックもお休みしなければならず、皆様にもご迷惑をかけてしまう上、私達にとっても相当な出費になります。それでも大きな国際学会に行くと、とても勉強になりますし、世界の趨勢が分かります。今回の学会でも展示ブースだけで100以上はあり、それぞれのブースで各国の会社が色々な薬剤や治療方法を紹介しています。しかも大きな会社のブースなんかめちゃくちゃ広くて、日本の学会のブースの10倍以上です。企業ブースでは朝食用のパンやコーヒー・ジュースから、アイスクリームやシャンパンまで振舞われていて、育ちざかりの腹ペコB君は大喜びでパンやアイスにかぶりついて栄養補給をしていました。(本来はこのような用途の為にスナックを提供している訳ではないのでしょうが・・・^^;)。でもB君は食べた分?韓国の会社のブースでは通訳として大活躍していました。)学会会場もフロアが5つ以上ある広大な会場で、口演の演題数がめちゃ多い。口演は基礎の学会より圧倒的に多く、激しい議論も交わされていて、「活気」という点一つとっても日本の美容学会とは全然違います。 学会の内容を詳しく紹介すると紙面が足りず、恐らく皆様が退屈してしまうので、ほんのさわりだけ紹介します。まず、アンチエイジングへの感心は高まりはすれ衰退する事はないホントに大きなトレンドになっているようです。そして若返り治療の世界の趨勢は、手術よりも注射治療に傾いているようでした。有効な薬剤はボトックス・ヒアルロン酸がほとんどでそう新しい知見はありませんでしたが、中顔面(ゴルゴライン辺り)をふっくらさせると若々しく見えるという治療が多く発表されていました。そのような中でようやく有効成分入りのヒアルロン酸が流行り出している様子です。当院ではとっくにその分野ではエセリスカクテルを開発しているし、症例も沢山あるもんね。私ってひょっとして世界の趨勢を先取りしているかも?・・・(^^)。その他にはヒアルロン酸を少量ずつ細かく注入するマイクロインジェクションでお肌がツルツルになる手技が紹介されていて、これは参考になりそうです。それに関連する新しい器械の情報も仕入れました。PRPの新しいキットもあり、新しいPRPの開発のヒントになりそうです。・・・などなど。またここで仕入れた情報を基に、効果的で安全なメニューの開発に取り組んでいきたいと思います。 ちょっとここで学会の合間にあったプチ贅沢のご報告。欧州一、いや世界最高峰と言われるスパ「テルムマラン・モンテカルロ」に行ってみました。ここは先日フランスとモナコの≪顧客が選ぶスパ・コンクール≫で、2013年エステ・スパ最高賞を受賞したそうです。(この賞はフランスとモナコにある65か所のスパで顧客満足度アンケートを実施し、6,652枚に及ぶアンケートの結果選出されたそうな。)ここは地中海の海水を使ったタラソテラピーで有名で、プールには地中海の沖合300m、海底37mから汲み上げられた海水が使われ、マイナス・イオンやミネラルが豊富に含まれて浄化効果が強いとの事。地中海の自然の恵みを吸収しながらの最上級のリラクゼーションタイムと、美容や健康のためのコースが世界中のセレブに人気だそうです。 テルムマラン・モンテカルロに一歩踏み入れると、白い大理石が基調の受付からプール、テラスのあるレストラン、スパルームまで、広々としてとても明るく居心地のいい空間。一度チェックインすれば、夜の9時まで施設は自由に使えます。そこで最高と言われる「モンテカルロ・ダイヤモンド」というマッサージのコースを受けてみました。まずはダイヤモンドのパウダーやローズオイルをブレンドした死海の塩のゴマージュ(天然の素材で角質を取る手技)で体をくまなく磨き上げます。その後のジェットバスがすごく気持ち良かった!! 一人用の海水を使ったジェットバスなんですが、水流の勢いが凄くて、足から順番にツボが強くマッサージされるのが心地良い! 自宅に一台欲しいと思ったくらい。ゴマ-ジュの後でこの海水風呂に入ると、筋肉の緊張が取れるだけでなく、毛穴の奥深くまで洗浄され、デトックス効果もあるらしい。その後シャワーを浴び、24金の粉末が配合された贅沢なクリームでマッサージ。ローズオイルのいい香りがして癒され、マッサージの後はお肌がキラキラ輝いていました。パーティーの前に受けるとデコルテなどがキラキラしてゴージャスな雰囲気を出せるとか。(この日はパーティーの予定もなく、肩を出すドレスなんか寒くて着られない気温だったので残念。)  担当はスパで唯一の日本人の方だったので、マッサージに指圧も少し入れてもらい、話が弾みました。(ホントに世界のどこに行っても日本人っているんですね。おまけに神戸大の大学院に甥っ子がいるとの事だったので、クリニックのバイトに来てくれないかと頼んじゃいました・・・(^^)。)スパのマッサージには、ヨーロッパで最も質が高いと評価を受けている、スイスのアンチエイジング・クリニックから独立した「ラ・プレリー」という高級化粧品会社がこのスパのために開発したオイルやクリームを使っているそうです。ダイヤモンドも金もローズオイルもアンチエイジング作用があり、その他にキャビアの栄養素が配合されたキャビア・クリームも有名らしい。なんとも贅沢なクリームですね。今回は24金の入ったクリームと、ローズオイルが気に入ったので仕入れてきました。このクリームとオイルは皆様にも少しではありますがお分けしたいと思います。 しかし、さすがに世界一と言われているだけありますねぇ。世の中に沢山ある「自称世界一」とは本質が違います。何から何まで手がこんでいて、使っているものも一流のものばかり。まさに時間も空間も「贅沢」・・・です。(・・・てな事を書いていると優雅なセレブの旅・・・って感じなんですが、実はこんな優雅な事ばかりであるはずがなく、最初から最後までまさにドタバタの珍道中でした。とてもここでは書ききれないので、次回の通信もこのモナコネタで引っ張らせてもらおうかな・・・って思っているところです。)当院のコンセプトはいたずらにラグジュアリーなものを追いかけるのではなく、安全で効果の高い治療をリーズナブルな価格で提供するという事ですので、ここのスパとは全く路線が違います。ただ、今回勉強になった事は、本当に一流であるって実はリーズナブルな価格なのだな・・・って思った事です。世界のお金持ちが集まる訳ですから、当然、お客さんは相当に目が肥えた人達です。(それにお金持ちって意外とケチなんですよね・・・。ケチって言い方が失礼だとすれば、価値を見極める目が高い・・・という事だと思います。)その人達の目にかなわねばならないのですから、サービス、備品、空間、使っている材料などすべてが「品質の良いもの」です。これは普通に考えて相当大きなコストになっていると思います。これだけ「本物」に囲まれて本物のサービスを受ける事ができるのであれば、ある意味「これはお買い得なのではないか?」って思った訳です。「自称世界一」のお店に行くと、それほど品質が良くないものを「テクニックで良く見せている」だけで、値段だけ一流って感じがします。どうしてもそれが見え透いてしまうんですよね。私の場合はその感覚の反発が今のクリニックのコンセプトの元になっているのですが、今回は「本当に良い物の値段」という事を改めて考える良い機会だったと思います。たまには少しくらい贅沢しなきゃね・・・って、食べ過ぎてダイエット中の自分への言い訳をしながら、今回はここまでにしておきます。皆様も季節の変わり目は体調の管理にお気をつけください。お後がよろしいようで・・・^^;)。

第121回  (2013年04月)  「春なのに・・・」

こんにちは。柴田美容皮膚科クリニックの柴田です。最近はようやく暖かくなってきて、これから春本番って感じですね。この通信を書いている現在ではまだ桜が咲き始めたところなんですが、皆様のお手元に届く頃はもう桜は満開かもしれないですね。春って言うと皆様は何を思い浮かべますか? 寒かった冬がようやく終わりを告げ、春風の元で植物は新しい芽が息吹き始めます。学校や職場でも4月は新しい学期や区切りの始まりですし、新しい人が入学したり入社したりしてきますので、色々な意味で「新しい事の始まり」の季節ですよね。ただ、以前のクリニック通信にも書いたのですが、年間を通じて最も自殺が多いのも春なんです。元気一杯でやる気満々の人にとって「新しい事の始まり」って楽しみも多いのですが、精神的にそれほど強くない人にとって「古い事をやめて新しい事を始める」事ほどストレスが溜まる事はないのだと思われます。そう言えば私も小学校の時は、なぜクラス替えがあるのか本当に理解できませんでした。せっかく1年かけて仲良しになった友達とクラスがバラバラになって、また知らない人達と一から友達にならないといけない訳ですから、それはもう4月の新学期はストレスが溜まりまくっていたような気がします。初めのうちは新しいクラスの友達とうまく馴染めずに、休み時間になると仲良しだった友達のいる他クラスにわざわざ出向いて遊んだりした事もありました。勿論、今になって思えばそうやって強制的に何かをリセットする事で新しい変化を受け入れ、環境の急変に対応できる柔軟な人間に育てるという教育の一環だったのだな・・・って思えますが、当時の狭い世界で生きていた自分達からすると「全く何のためにクラス替えがあるのか解らない・・・」って思ってましたし、4月は大変なストレスを抱えていたような気がします。 ところで最近がグローバル化が進んでいて、当院でも留学生のアルバイトが多い事もあって、日本のように4月に新学期が始まるのは世界の中でも珍しく、多くの国では9月に始まるって事を聞くようになりました。確かに新学期っていつ始まってもおかしくないんだろうけど、やっぱり日本人と言えば「桜」ですよ。あの桜の季節に1年生がランドセル背負って入学式に行くって事がなければ、もうそれは新学期じゃないじゃないですかぁ。世界がどうであれ、日本人は4月の入学って譲れないんじゃないかな・・・って思っていたのですが、どうもそれがそんな事でもなく、明治維新直後の頃は欧米にならって新学期は9月から始まっていたそうなんです。皆さん知ってました? ちょっと調べてみると・・・ ●江戸時代 ・寺子屋、私塾、藩校などでは特に入学の時期を定めず、随時入学できた。 ●明治時代初期 ・明治維新により西洋の教育が導入され、高等教育では9月入学が主流となる。 しかし、富国強兵政策の影響もあり、その後様々な新年度が4月から始まるようになります。 ●1886年(明治19年) ・政府の会計年度が4月-3月になる。 →会計年度に合うよう、小学校で4月入学が奨励されるようになる。 ・陸軍の入隊届出開始日が9月から4月に早まる。 →高等師範学校が4月入学とする事を定める。(優秀な学生を軍隊に確保されてしまう事を懸念?) ●1888年(明治21年) ・全国の師範学校も4月入学となる。 ●1900年(明治33年) ・小学校が正式に4月入学となる。 これに対し、帝国大学や旧制高校は9月入学を維持していましたが、 ●1919年(大正8年) ・旧制高校が4月入学となる。 ●1921年(大正10年) ・帝国大学が4月入学となる。 (出典:Http://allabout.co.jp/gm/gc/220653/) なんだそうです。へぇ・・・。もう日本では昔っから4月に新しい事が始まる伝統があったのだとばかり思い込んでいたんですが、そうではないのですねぇ。いずれにせよ、日本では4月に新しい学校に入学したり新しい会社に就職したりするだけでなく、会社では転勤も4月に多いので、引越したり住む場所まで変わり、今までとは全く違った新しい生活をスタートさせる人も多いようです。お隣の国の韓国では学生の就職戦線は日本以上のようで、女子学生が就職に有利なように、就職活動の時期になると美容整形に行く人が増えるのだとか・・・。ま・・・それには賛否両論あるようですが、ある出来事をきっかけに古い生活スタイルを捨てて、今までにない新しい自分に生まれ変わるという変身願望を持った人は結構多いようです。そのような人が「変身」するのに最も適した季節が、日本ではこの4月なんですね。 当院にも「変身願望?」を持った患者様がたまに来院されます。誤解の無いように申し上げますと、当院はシミ・シワ・たるみの改善を目指す美容皮膚科ですが、多くの患者様は「変身願望」なるものは持っていらっしゃらないように思います。むしろ極端な変化は望まれず、小さな改善を周りの人に知られずに行いたいという方の方が多いように感じます。おそらく変身願望を持っているような大きな変化を望まれるような方は、当院ではなく手術を主体としている美容整形外科の方に行かれるのでしょうね。その意味では当院ではどちらかというと保守的な患者様の方が多いようです。ただ、そんな中でも上記のような大きな「変身願望」を持たれている方が来られる事があるのですが、そのような方が望まれる治療の大半は「ダイエット」です。勿論、顔の気になるところを大幅に改善したいと望まれる方もおられますが、当院では外科手術ではなく注射を中心とした治療を主体としているので、初めから美容外科のような事は期待されていない場合が多いようです。しかし、ダイエットになるとかなり「無理」な願望の実現を期待される場合があります。確かに体脂肪率を30%から10%台にする事は可能だとは思います。ただ、理屈の上で可能な事と実際にできる事とは大きな乖離があります。やはりダイエットは食べたい事を我慢するという非常に大きな自分への制約が必要になります。そもそも、そのような自制ができる人はそこまで体脂肪率が上がる前に手を打っている訳で、「今日から決意しました・・・」って言うような事では普通は続きません。そのため、何度もダイエットに失敗した人は食欲抑制剤を処方して欲しいとか言われるのですが、正直に申し上げてそれは限界があります。やはり、日頃の食事制限をきちんと行い、一定以上の運動を行なっていただかないと体重は減りません。(逆に言えば、それをきちんと行えば殆どの人が確実に効果を出せます。) そんな訳で残念ながら、極端な変身願望をお持ちの患者様のリクエストにお応えして結果を出すというのは本当に困難であり、最近では初めから「相当厳しいです」と申し上げる事が多くなりました。もっとも、脂肪吸引のような外科手術を行えば急激に脂肪を減らす事もできますが、それには大きなリスクが伴いますし、食生活が変わっていなければ確実にリバウンドします。そんな訳で極端なダイエットを期待する患者様にはきちんと説明を行い、無理な事は無理だとお答えする事が多いのですが、一方で「へ? 今のままでも十分じゃないですか? なんでダイエットが必要なんですか?」って言うようなお悩みを持っておられる患者様のご来院も結構あるのです。そのようなケースは一見すると全然太っていなくて、どちらかと言えば綺麗な方も多いのです。ところが話を聞くと「いや・・・実は服で必死に隠してるんですけど、この下腹部を見てもらえますか?」と言って服を脱がれると、「ああ・・・確かに・・・。ここにこんなお肉が隠れているのですね・・・」と言った感じです。もっと解りやすく言えば、体は健康で、全体としてダイエットが必要な状態でなくても、ご本人にすると体の一部に異常に脂肪がついていて、そこがどうしても取れない・・・って事でお悩みな訳です。早い話が部分痩せを望まれているのです。これが下腹部のように服で隠れている部分だとメソセラピー(脂肪溶解注射)でかなり確実に効果を出せます。ただ、お顔のように露出している部分であると相当難しいのです。なぜかと言うと、現在のメソセラピーは注射の後に腫れを伴う事が多く、露出している部分に打つにはあまり向いていないのです。しかしながら、部分痩せというのは非常に難しく、いくらダイエットしても気になる部位の脂肪はなかなか落ちません。無理にダイエットすればバストなど落ちて欲しくない部分の脂肪が落ちてしまう事から、メソセラピーのような方法で取り組まねば、まず満足のいく効果が現れないのです。そのような訳で最近は、目の下や頬などお顔の脂肪を取る時に、なんとか腫れが最小限になる方法はないか・・・と研究を行なっています。 お気づきの皆様も多いと思いますが、幸い(??)うちのスタッフにはコロコロした子が多いので、実験モニターには事欠きません・・・(^^)。新しいメソセラピーの薬剤や、混ぜると腫れを引き易くすると言われている薬剤を取り寄せ、顔やお腹の左右で組合せを変えて実験です。モニターは留学生のHちゃん・Nさん、そしてS君。私も最近1-2kg太ったのと、年と共に下腹の脂肪が落ちなくなってきたので、参加してみました。 さて、ダウンタイムや効果を比較するために写真撮影は不可欠です。S君はいつもマスクで丸い顔を隠しているので、撮影のためにマスクを取るだけでみんなに笑われ、不憫な事に・・・。おまけに二重顎を撮影する時は顎を引いて写真を撮るので、またその度に笑われるハメに。そして注射後も、元々顔がでかいためか、腫れているかどうかが判らん・・・。また、お腹と腰の肉も結構あったので両方に注射したのですが、腰に打った薬剤の組み合わせが悪かったのか、3-4日は歩きにくいくらい痛かったようです。いつものようにドスドス歩けないので、「ジジイ歩き」と言われてました。深く打ったのがいけなかったのかと、Nさんには同じ薬剤の組合せで浅く打ってみたら、痛くはなかったけど痒みが出てしまいました。う~ん、この組み合わせは却下。 メソセラピーは少しダイエットもした方が良く効くという事で、みんなでメニュー表もつけてみました。やっぱりメニュー表をつけてカロリーを計算してみると、太っている原因が良く判りますね。S君は「そんなに食べないのに太るのは燃費がいいからだ」と自分では言ってましたが、実際にはお酒のカロリーが莫大だった事が判りました。やっぱり太ってる人って大抵食べ過ぎか飲み過ぎですよね。彼の場合は飲み過ぎの典型だったという訳です。私も結構お酒のカロリーが多かったのですが、S君ほどバカ飲みはしていなかったせいか、それほど制限しなくてもメソセラピー後は体重も少し落ち、下腹も少しスッキリした感じ。今までの経験からも、BMI20以下の人は食事制限なしでも効果が出る事が判りました。そこで3月は、BMI20以下の人のための、痩せても落ちない部分のメソセラピーを「ボディメイクセラピー」として、食事制限が必要な人のメソセラピーと分ける事にしました。BMIが高い人はやっぱり食事制限は必須のようで、こればかりは今のところどうしようもない感じです。脂肪溶解注射の薬剤は脂肪細胞の外に脂肪を出しやすくする薬剤なので、細胞の外に出した脂肪を代謝しなければなかなか痩せません。そもそもが肥満体質・・・と言うか食べ過ぎの人は、細胞の外に出した脂肪が代謝しにくいので、脂肪溶解効果が出にくいのは過去の臨床データからも明らかです。 さて、2-3週間すると、S君もNさんも丸々した顔がスッキリしてきました。写真撮影すると、みんなS君を絶賛! 「めっちゃ顔痩せたやん!! 前は相撲取りみたいやったのに!」「前は二重顎が顔の倍ほどあったのに、顎減ったやん!」(褒めてるのか何なのか分からん・・・。) 確かに二重顎の脂肪は半分ほどになって顎がちょっと尖ったし、メソセラピー前はあまりに顔が丸々していたので顔の中心に寄って見えていた目鼻も、ちょっとつぶらに見えています。 「えーっ、このまま痩せたらS君、イケメンになるんちゃう??」 Yちゃんのお世辞(?)にS君は有頂天。「そうかなー?♪」 腰は痛かったのでトラウマなようですが、顔のメソセラピーはやる気満々のS君でした。S君もこれをきっかけに「彼女いない歴○○年」の人生が変わるといいのですが・・・(^^)。みんなの努力(?犠牲?)の甲斐あって、顔用の少し腫れにくい薬剤の組み合わせも判ってきました。まだまだ実験は必要ですが、少し光が見えて来たという感じです。これからも実験を重ねて、実際に患者様に提供できるメニューになるよう頑張りたいと思っています。こうご期待!   ところで、当院でも4月の新しい風は吹いて来ています。留学生のホープで何でもテキパキとこなしてくれ、クリニックのムードメーカーだったHちゃんが大学を卒業して、日本の大手企業Gに就職する事になり、愛知県に引っ越してしまいました。Hちゃんは口が悪いので、いつも上記のコロコロS君に対して失礼千万な事をズケズケと言ってはみんなの爆笑を引き起こしていました。(勿論、S君以外の笑い・・・ですが。)S君にとってHちゃんはもう「天敵」と言ってもいい状態だったのですが、おそらくHちゃんが卒業する事で最も寂しい思いをしているのはS君のような気がします。その代わり、Hちゃんは「自分よりも頭が良くてできる人」という触れ込みで、彼女のルームメイトを紹介してくれたので、新人Mちゃんが留学生アルバイトとして働いてくれる事になりました。MちゃんはHちゃんに負けず劣らず、S君にズケズケ失礼な事を言ってはみんなの笑いを誘う才能があるので、S君もHちゃんのいない寂しさを少しまぎらわせる事ができているようです。 社会人になるとどうしても保守的になってしまいますし、ある程度の年齢になると大きな変化を嫌ってしまうようになりますが、春になるとやはり世の中は変化しているし、春は新しい出会いと別れの季節なんだな・・・って思います。思えば新しい出会いって、それが良かったって実感するのはその人と仲良くなってからなんで、少なくとも普通は夏以降ですよね。反対に別れは確実に春に実現する訳ですから、春って新しい出会いの季節って言うよりは自分の記憶を辿っても「別れの季節」と言った方が良いのではないかと思います。もうかなり昔にヒットした「春なのに・・・」って歌をご存知ですか? 中島みゆき作詞作曲で柏原芳恵が歌って80年代に流行ってました。(また古い話ですねぇ・・・^^;)。しかし「昭和の男」と呼ばれるほど古い事を良く知っていて、本当は26歳の時に「46歳」とか「64歳」とかって留学生たちにからかわれていたS君なら絶対に知っているはず・・・。) 「春なのに・・・」は春の別れを歌った曲で、とっても物悲しい歌です。(中島みゆきさんってこんな歌作らせたら天才なんですよね・・・ホントに。)「春なのに・・・春なのに・・・ため息またひとつ・・・♪」 私も正直言うと春は悲しい季節のように思います。ただ、そんな悲しい春を忘れさせてくれるために桜が咲いてくれるんじゃないかな・・・って思うのです。あの満開の桜が新しい変化に期待を持たせてくれるからこそ、この悲しい季節を乗り越える勇気と希望が湧いてくるような気がするのです。昔の人が新学期を9月から4月にしたのは大正解だったのではないかな? またお花見に行くのが楽しみになって来ました。(ま・・・その後の団子の方がもっと楽しみなんですが・・・。)皆様もよいお花見を!

第120回  (2013年03月)  「風が吹けば桶屋が儲かる?」

こんにちは。柴田美容皮膚科クリニックの柴田です。暦の上では春を迎えているはずなんですが、まだまだ寒い日が続いていますね。ノロウイルスとかも流行ってますし、今年は風邪と花粉症とPM2.5対策の為かマスク着用の人が多いようです。皆様も体調管理には十分お気をつけくださいね。  今月の話題ですが、先日東京で美容外科学会の学術集会があり、PRPのパネリストを依頼されて発表した時の話です。クリニックもすごく忙しい時期だったので本来は依頼を受けないつもりだったのですが、ある人からどうしても・・・と頼まれてしまい、どちらかと言うと断りきれず・・・って感じで発表を行う事になってしまいました。そんな訳であまり気乗りせずに出かけたのですが、予想外に得るものがあり、さらにこの学会に出かけた事がきっかけで当院でもある試みを行う事になりました。   当日は特別講演というものがあって、京大再生医科学研究所のT先生という方が行う事になっていました。私はT先生という方は存じ上げてなかったのですが、事前に配られるプログラムを見ると面白そうな話だなと思ったので、拝聴させていただきました。T先生の専門は生体組織工学。聞き慣れない言葉ですが、生体組織工学とは、最近流行りの再生医療(細胞を活用する事によって、自己組織の再生修復を行う治療)の細胞が増殖できるための適当な環境を作る医工学技術の分野(医学部と工学部の間みたいなもん)です。はぁ・・・なんやねんそれ?・・・って感じですよね。例えて言うと、生体材料を使って細胞が育ち易いベッドを作ってやるというような技術を開発する分野です。それでもって生体材料(生体適合材料=バイオマテリアル)というのは、生きている細胞に接触できる材料、つまり生体に移植する事を目的とした素材の事です。例えば人工関節や義歯に使われる金属、人工骨に使われるハイドロキシアパタイト、眼科用に使われるヒアルロン酸なども生体材料の一つですね。いずれにしてもNHKのプロジェクトXで、中島みゆきの「地上の星」をバックにドキュメンタリーが放映されてもおかしくないような、世界が注目する最先端技術・・・ってやつです。 T先生の講演は、生体材料であるゼラチンから作ったゲルにFGF(線維芽細胞増殖因子)などの細胞増殖因子を混ぜて、体内で細胞増殖因子が徐々に放出されるようにし、細胞移植の治療効果を高めるDDS(ドラッグデリバリーシステム)という方法についての話でした。しかし、この研究の詳細は相当ややこしい話になりますので割愛します。まぁ・・・T先生には申し訳ないのですが、今回の通信の趣旨からすれば、先生の話の詳細を解りやすく私が解説する自信は全くないばかりか、割愛しても全く支障がないのです。なぜならば皆さんにお伝えしたいのは研究内容の方ではなく、T先生の人柄の方だからなんです・・・(^^)。     まず驚いたのは、会場に一歩入った途端に伝わってくるT先生のすごい迫力です。医科系の学会では初めて聞くコテコテの大阪弁。そしてマイクなしで十分なよく通る大きな声。一歩間違えば怪しげなネットワークビジネスの勧誘会場か選挙事務所の後援会って感じです。中でも印象に残ったのは、DDSで糖尿病ラットの皮膚潰瘍が治ったり、イヌの心筋梗塞後に詰まった心臓の血管が再生したり、難聴が治ったりという動物実験での素晴らしい結果と、そんな結果が出ているにもかかわらず、臨床試験を始めるために厚生労働省の認可が下りるのに6年かかったという話。 「6年ですよ、6年! お役所の仕事ってほんまにうるさいし、遅いん  ですわ。世の中にはこの治療を 待ってる患者さんがいっぱいいる  のに、そんな事全然考えてへんからね。しまいに頭に来て、『耳   の聴こえへん患者さんがこの治療を待ってるんですよ! あんたは耳聞こえるからそんな悠長な事 言う  てるけどね!』言うて、半分脅しですわ」 そうやって、やっと臨床試験にこぎつけられたとか。そして最後には 「え? あ・・・もう時間ですか? もう5分だけしゃべってもええですか? これからは大学と企業が結びつか  なあきませんよ。研究成果を世の中に還元するためには、商品化せなあかんのです。けど、大学でいく  ら頑張っても商品化は不可能です。そやから僕はいろんな企業と共同開発してるんですよ」 ・・・と5分以上の熱弁が続くのでした。 こんな書き方をするとなんか朝まで生テレビに出て来る自己主張の強いオヤジのように思われるかもしれませんが、T先生の名誉の為に申し上げますと、そんな事はありません。それにこのT先生は私なんか足元にも及ばないホントに凄い経歴をお持ちです。工学博士・医学博士・薬学博士と3つの博士号を持ち、米国マサチューセッツ工科大学・ハーバード大学医学部にも留学して研究されています。MITとハーバードと言えば工学部と医学部の世界最高峰ですよね。40歳で教授になり、国内外6つの学会の理事、工学・医学・薬学・歯学の14大学の非常勤講師と客員教授、6つの国際学術雑誌の編集長、1050報の学術論文、特許申請130件、著書17冊・・・え? もう十分ですか? ですよね。なんじゃこりゃ・・・って感じでしょ。もう唸るしかないです。一体どうやったらこんなにたくさんの仕事ができるんでしょうねぇ。       そんなT先生の講演の後、私が発表したPRPのパネルディスカッションでした。パネルディスカッションでは5人の演者が発表の後壇上の席に座り、質問に答えたりディスカッションしたりします。T先生は特別ゲストとして座長席に招かれ、座長と一緒にディスカッションに参加されました。  ちょっとだけ私の発表の内容を申し上げると、当院独自の高濃度PRP注入療法ではPRPにFGFを混ぜなくても効果を出せる事、当院で行ったモニター半顔試験(顔の半分で違う方法を行って比較する試験)で、PRPの効果を左右する要因は一番がPRPの血小板濃度、その次に単位面積当の血小板数と注入ポイント数、次に血小板総数である事が明らかになった事などです。(ついでに輸入業者Bに「高濃度PRP作製用のキットを共同開発しよう」と持ちかけられて半顔試験をしたけど途中で開発が中止になり、ノウハウだけ持って行かれて、モニター試験ばかりしてたのでクリニックが赤字になりかけた裏話もして笑いを取っちゃいました。どっちかというと研究内容よりこの話のウケが一番良かったような気がするが・・・^^;)  そんなこんなでディスカッションも無事終了。そして学会終了後に演者の懇親会があり、学会長のY先生から、私もT先生と共に招待されました。T先生に挨拶すると、 「先生、すごいなー! 先生の発表一番まともやったわ! 半顔試験なんかようやったねえ! あんなん  大学では絶対できませんわ。よっぽど患者さんに信頼されてるんやねえ。さすがやわ! 先生、気に入  ったわ!」 と、めっちゃ大阪弁で褒められました。え・・・そこが褒められるポイントなん?・・・って事は別にしても、こんな凄い研究者の先生から褒められるってのは純粋に嬉しいもんです。そして懇親会の会場でもT先生とY先生の間に座らされ、盛り上がってしまいました。     T先生:「僕、京大ですけど、大阪の京橋出身ですねん。先生は神      戸でしょ?」 柴田 :「私も出身は大阪です。実家は池田ですけど、京橋も住ん      でた事ありますよ」 T先生:「えーっ、ほんま?  池田やったら大教大附属池田            (高校)?」 柴田 :「何で判るんですか?」 T先生:「そらあの辺やったら大教大でしょー。僕、大手前(高校)で      すねん」 ・・・とめちゃローカルな話題で盛り上がり。京橋と言えばあのグランシャトーがあるところですね。(なんか懐かしいCM思い出すなぁ・・・。『京橋は、ええとこだっせ! グランシャトーがおまっせ・・・♪』 一体あのCMは誰がOK出したんでしょうねえ。あれとパルナスのCMだけは心に刻まれ、一生忘れる事はありませんが・・・。あ、超関西ローカルなんで分からない人は無視してください・・・。) Y先生:「へー、お二人とも大阪ですか。僕は熊本の出身でね」 T先生:「あ、今度講演で熊本行くんですけど、馬刺しの美味しい店ありません?」 Y先生:「あります、あります! ここ行ってみてください!」 Y先生はすかさず背広の内ポケットから馬刺し屋のパンフレットを取り出してT先生に渡しています。 T先生:「先生、なんでこんなパンフレット持ち歩いてるんですか??  馬刺し屋の回しもん?」 なんでタイミング良く馬刺し屋のパンフがあったのかの謎は解き明かされていませんが、とにかく二人とも教授とは思えない気さくな先生です。学会やそれ以外の話でも盛り上がり、あっという間に時間が経ってしまってT先生の帰りの新幹線の時間に。私は最終の新幹線で帰るつもりだったんですが、T先生に「先生も一緒に帰る? 僕の隣の席、空いてますよ!」と3回ぐらい言われて、勢いで一緒に帰って来てしまいました。そして新幹線の中でもいろいろと面白い話を聞く事に・・・。T先生はサイボーグを作りたいと思って工学部に入り、工学部の助手をしながら医学部へ。そして研究成果をビジネスへ展開し、商品化に結びつける方法を学ぶためにMITとハーバードへ・・・。すごくエネルギッシュな上に、実用化されてこその研究だから商売人の感覚で相手を立てて話をする・・・というところが普通の教授とは全然違ってて、感心してしまいました。詳しい内容はまた次の機会にお話させていただくとして、なぜかこの先生のお話から当院のホームページを改定する事なりました。     昔の諺に「風が吹けば桶屋が儲かる」というのがありますが、自分の中では何かそんな感じがするのです。何かをやり始める時ってきっかけがあるんですが、そのきっかけが全く因果関係なさそうなのに、偶然が偶然を呼んでそうなってしまった・・・ってありますよね。 この話が進む為にはT先生とは全く違うタイプの友人であるMが登場します。このMは私ともかなりタイプが違うのですが、不思議な事に全くタイプが違うからこそ話をしていても居心地が良い人っていますよね。考えてみれば二人の唯一の共通点はグルメ好きって事くらいしかないのですが、Mは確実に「自分の世界を持っている」って感じの不思議な魅力がある人間です。先のT先生からすごくエネルギーをもらったので、この話を数日後、Mに力説したところ・・・ M:  「へぇ。そんな人もおるんやね。ところでその馬刺し屋さんってどこなん? ぐるなび見てみようよ     ・・・熊本まで行く機会はないかもしれんけど」 柴田:「はぁ? あんた人の話真面目に聞いてる? 馬刺し屋さんの話はここではどうでもええやん!」 ・・・大体彼女はどんな話をしても結局はどこかの飲食店の話に持っていく癖があります。それは私も人の事を言えたもんではありませんが・・・。 M:  「ちゃんと聞いてたよ。凄い人やね。6年も待って役所になんかを認可させたんでしょ? ようそんな     我慢続くよねぇ。私やったら諦めてまうな。大体待つの嫌いやしね。 あの神戸のKなんかも3ヶ月     待ちや言うやん? いくら美味しくても3ヶ月前から予約して食べに行く気はせえへんわ。せっかく     美味しいのに、あれどうにかしてくれんとねぇ」         ・・・と、もう話が咬み合わないのは今に始まった事ではないのですが、彼女の言ってるKというのは神戸では有名な和食のお店で、ミシュランガイドで二ツ星を取ってから超予約が取りにくくなってしまったところです。私もクリニックの患者様(この方も超グルメ)に、Kがミシュランに掲載される前に「ここはすぐにミシュランに載って予約取れなくなるから、早く行った方がいいわよ!」と教えてもらって行ったのですが、確かに美味しいところです。(そんな事を予測できる人も凄いと思うのですが・・・。)しかし私も最後に予約をしようとして電話した時に「すいません・・・3ヶ月先位でないとお席をご用意できなくて・・・」と言われてからは全く行かなくなってしまいました。 柴田:「そやね。最後に行った時に大将は『ホントは当日キャンセル      もあるし、日によってはそこまで混み合ってない事も結構あるんですよ。でも何度も電話くださいって      言う事もできず、 困ったもんです』って頭かかえてたなぁ」 M:  「そやろ・・・。当日キャンセルあった時に連絡してくれたら喜んで行くのになぁ・・・」 柴田:「ま・・・大将の気持ちは解かるわ。うちのクリニックも結構予約一杯で断らなあかん事もあるけど、      当日キャンセルもあるし、患者さんの希望が重なるとこは重なってばっかりで、その他の時間帯は      ガラガラになったりするもんねぇ。あれって本当にうまくいかんもんやなぁ・・・って思うね」 M:  「そんなんやったら飛行機会社みたいに、席空いてたら空気運ぶよりマシって事で、空き枠をディス     カウント価格で販売したらええんちゃう?」 柴田:「あんた何言うてんの? うちは飛行機会社と違うし、だいたいどうやって空き枠があるって患者さん      に知ってもらうんよ?」 M:  「そんなんメルマガとかツイッターとか、どこの会社でもやってるやん」 柴田:「え・・・何? それ? どうやって?」 M:  「あんた知らんの?」 ・・・とこんなやり取りがあり、最近話題のLCC(ピーチとかジェットスターと言ったディスカウント航空会社)が空き枠が出たらメールやホームページでお知らせしたり、ツイッターとかで告知している事を教えてもらいました。 ・・・。)    う・・・む、そうか。最近はお陰様でクリニックにご来院いただける患者様も増え、予約が取りにくい状況が続いていました。その事を私の中ではどこかで「自己満足」に浸っていたように思います。恥ずかしながら、一生懸命やって予約の取りにくいクリニックになるのが良い事のように勘違いしていました。確かにKは美味しいし、値段もリーズナブルで良いお店だと思います。それは大将の努力の賜物だと思います。だからと言って、ご飯を食べるのに3ヶ月先の予約をしなきゃいけないのはどうなんでしょうね。現にそれで私も、もう1年くらいは行かなくなっています。そこで、すでに予約されている枠はどうしようもないとしても、空いている枠についてはもっと積極的に公開してお知らせすべきなのではないか・・・と思ったのです。それって押し付けがましい事のように思っていたのですが、逆に謙虚さに欠けていたのではないかと反省しました。だって私が逆だったらKのホームページに「この日とこの日は空いています」って書いてあれば絶対にもっと頻繁に行ってると思うし、なんでそんな事すらしないの?って思いますもん。(あ、是非Kの大将・・・この通信を読む機会があったら、ホームページ作って空き情報を公開してください!!) そんな反省から、当院ではホームページにリアルタイムに近い空き枠の情報を公開する事にしました。今後ツイッターとかを使って、当日のキャンセルがあった場合などは割安で治療を受ける事ができるような施策を初めようと思っています。勿論、これが最適な事なのかどうかはまだ自信がありません。でも、少なくとも何かを改善する可能性があるにもかかわらず何もしないのは、傲慢にしか過ぎないような気がしたのです。色々とやってみて最適な回答を見つければいいし、さらに改善を続けていくしかないと思うのです。           ところでこの事はT先生の話とは全く因果関係がないように見えますが、やっぱりこのホームページの改定はT先生に出遭わなかったらやってなかったような気がするのです。うまく説明できないんですが、全く同じ事でも違う人が言っていれば具体的な結果は出ないんだけど、ある人が言えば何かの結果となって現れる事があるとでも言うのでしょうか・・・。T先生が教授なのに絶対に偉そうにはしなくて、商売人の感覚で常に相手の求めている事を考える、という姿勢にも動かされたのかもしれません。T先生の話をせずにMが予約の取りにくい飲食店の話をしても、実際には小さな事でも行動はしなかったのではないか・・・って思うんです。何かそこにT先生→M、そして私へのエネルギーの連鎖があるように思えて仕方がないんですよね。エネルギッシュな人に出遭うと自分の中にある何かが啓発されて、何かを形にしたいという潜在意識が目覚めるのかもしれません。「風が吹けば桶屋が儲かる」の「風」って、結局は何かのエネルギーなんですよね。きっかけは何であるか分からない・・・。でも人を動かすような何らかのエネルギーがあれば、それがきっかけとなり、人生が動いていく。そして思っても見なかったようなところで誰かに影響を与えているんだなと思います。最初に吹く「風」はそのエネルギーが大きければ大きい程、どこかで何かの影響を与える可能性が大きいものなんですね。私自身も努力を続けてそよ風くらいにはならねば・・・と考える今日この頃です。

第119回  (2013年02月)  「おせちを食べて経済再生!」

こんにちは。柴田美容皮膚科クリニックの柴田です。今年は本当に寒いですねえ。皆様はどんなお正月を過ごされましたか? 私は元旦はクリニックにバイトに来ている留学生たちにおせちとお雑煮を振る舞い、2日は実家に帰って洋風と和風のおせちを楽しみ、3日は友人とおせちをあてに飲み、4日は従姉妹たちと40年ぶりに再会して食事会・・・と、溜まっていた仕事を片付ける暇もなく、飲み食い三昧で過ごしてしまいました。やはり人間は禁断の果実を食べちゃうイブの子孫なのか・・・食べ物の誘惑には弱いものですねぇ・・・。 最近はちょっとダイエットモードです。(たまにはハメを外してもちゃんと戻せばいいんです・・・ってのが私の持論でして・・・(^^)) ところで、その時にすっかり酒のあてになってしまったおせちは、特殊な冷凍技術で「冷凍しても美味しいおせち」を開発し、おせちの売り上げ全国一になったという、患者様であるO様が贈ってくださったものです。これは冷凍と侮ってはいけません。普通の人に黙って出せば冷凍品だと判る人はまずいません。留学生たちも友人たちもびっくりしていました。ここでは名前は書けませんけど、かなり有名な料亭のおせちなんかも実はO様の会社の冷凍品であったりするようです。(そりゃそうですよねぇ。普段でも忙しい料亭の皆さんがお正月の時期だけ急に何百ものおせち料理を作る事なんてできないと思ってました。かなり前から仕込んでいた冷凍品だったんですね。)   O様の企業秘密なので詳しい事は言えないのですが、その冷凍技術とは微妙な振動を加えながら凍らせる事で細胞を破壊する事なく冷凍保存ができるというものです。以前私が研究していた、自分の血液の血小板を冷凍保存しておき、好きな時にPRPができるようにしようという実験(凍結PRP)は、このO様から技術提供をしてもらう事がアイディアのベースとなりました。残念ながらというか、いつもの如くというか・・・だこの実験は実用段階にまでは来ていません。何度も血小板を凍結させてPRPとして試し、凍結させる前の血小板に近い効果を得る事はできたのですが、同時にダウンタイムも軽減できるのではと考えていたのがそこまで到達していないので、まだまだ研究の余地有です。しかし細胞保存の技術もどんどん進化しています。実際に血液の冷凍保存そのものは実用化されていますし(マイナス80度で10年間保存ができると言われている)、血液製剤などの冷凍保存はかなり広く普及しています。ただ、いかんせんその生成コストや保存コストは高く、一般の美容皮膚科で導入できるレベルのものではありません。これが一般に普及できるレベルにコストが下がれば安定したPRP製剤を自分の血液で作って保存する事が可能になります。(自分の血液なのでアレルギーや生体拒絶反応が出ない安全な治療法になります。)おせち料理からPRPって全く関係がないような世界ですが、技術の革新はこのようなアイディアも産んでくれますし、将来の夢も広げてくれるのです。      2013年も始まったばかりですが、自民党が再び政権をとってからは安倍首相の日本経済再生プランへの期待からなのか、円安になったり、日経株価も一貫して上昇したり、不況の克服に多くの期待が寄せられているようです。(・・・っておせちからいきなり経済の話題になるなどちょっとクリニック通信らしからぬ展開ですが、私だってYahoo! ニュースくらいは毎日見ているのだ。)経済がグローバル化して、日本だけが「失われた20年」と言われ、グローバル化から取り残されてしまったようなのですが(・・・これもYahoo! ニュースの受け売り・・・)、私の個人的な生活感だけで言ってもグローバル化って凄い速度で進んでいるように思います。うちのクリニックのスタッフにも中国からの留学生が3人もいます。韓国からの留学生を合わせると、留学生の数は日本人を上回ってしまいます。最近の日本の若者は少し厳しくするとすぐに辞めてしまうので、治療内容を理解できるくらいの素地があってバイタリティーもあるスタッフを集めようとすると、留学生に頼らざるを得なくなるのです。「中国は30年前の日本」とO様も言われていましたが、留学生たちは皆ハングリー精神があり、とても頑張ります。しかし言葉の壁もあり、日本語が拙かったり日本の文化に慣れない子は苦労する事もあります。中国の留学生で新人のRさんが言葉がちゃんと通じないために誤解され、怒られて落ち込み「クリニックを辞めようか・・・」と悩んでいた時、同じ中国の留学生でクリニック勤務では先輩のHちゃんが「先生は厳しいけど、ここで働いていたら先生からすごくたくさんの大事な事が学べます。将来きっと役に立ちます」と説得してくれて、Rさんは立ち直りました。今までの努力が実ったようでとっても嬉しい出来事でした。             そんなHちゃんも大学卒業間近となり、日本の大企業Gに就職が決まってクリニック勤務もあと1か月となりました。(後任を探すのがこれまた大変なんだが・・・。)Gの内定が決まった時は大喜びのHちゃんでしたが、Gでの研修をいろいろ受けている間に、日本の大企業の体制に疑問が湧いて来たようです。ちょうど韓流B君も就活の時期で、元々IT大学にいてプログラムにも詳しく、クリニックのシステム系の管理を任されている彼が私の友人Nが経営するIT系の会社に興味を持っていたので、Hちゃんも一緒にNの会社を見学に行く事になりました。Nの会社は十数年前はボロボロのマンションの一室を借りて数名で運営していた極小会社でしたが、その後急成長して今や近代的なビルの2フロアを占め、東京オフィスやデータセンター、そしてフィリピンに開発拠点を持ち、従業員数も100名くらいの会社になっています。     私も保護者として(?)会社見学に同伴し、見学の後に4人で食事をしたのですが、HちゃんとNは意気投合。何しろNは今の日本ではあり得ないくらい変わった経歴を持っています。大学時代、米国留学中に親の会社が破産して親は夜逃げし、連絡が取れなくなってみなしごハッチ状態に。あ・・・「みなしごハッチ」って知ってます? 「母を訪ねて三千里」のマルコって言った方がまだ知っている人多いかな? 最近では日本のアニメは世界的に普及しているので、アニメの話をすれば日本人より留学生の方がよく知ってる事があるんですよねぇ。先のHちゃんも「なぜ留学先を日本にしたの?」って聞くと「日本のアニメが好きで興味を持ってたから」って言ってました。恐るべし日本のサブカルチャーです。話を戻すと、Nは仕送りも途絶えて働かざるを得なくなり、米国に滞在していた叔父さんの紹介で旅行会社にアルバイトとして入って、いきなり電話で格安航空券を販売したそうな。(切羽詰まるとそれまでの留学先の大学では考えられないくらいメキメキ英語が上達したそうです。やっぱ人間、切羽詰まらなあかんのやね。)帰国後大学に復学するも、アルバイトでは授業料を払って生計を立てるのは無理なので、在学中に自分で会社を興したらしい。卒論はインターネット(当時はインターネットって言葉がなかったから、コンピュータ・ネットワークで作られた仮想空間って言ったそうな)について書いたのだが、当時は時代の先取りをしすぎたのか教授連に理解されず、おまけに鉛筆で書いたという理由で受理されなかったのに反発して8年も大学にいる事に。やっと卒業した後も一回も就職した事がなく(朝早く起きられないから就職させてくれる会社はないと諦めたという事で、大学に8年も在籍したのは、授業は行かなかったけどボーリングに行く時に学割が使えて便利だったから…らしい)、自分でいろいろな事業を興して崖っぷちを何度も経験しては這い上がり、今に至る…という波乱万丈の人生です。      N:「H ちゃんは卒業したら何をしたいの?」 H:「自分で起業したいんです」 おお! いきなりか! 少なくとも日本の大学生でそう即答する子は極めて少ないはず・・・。  H:「でもお金も経験もないし勉強も足りないから、大学院に行こうかとも思っ      ています」 N:「大学院に行くなんてお金と時間の無駄、無駄。お金がなくてもいいアイ      ディアとやる気があれば、お金を出してくれる人はいくらでもいるよ。実は      世の中はお金が余っていて投資をしたいのに有望な投資先がなくて困      っているんだから」 H:「ええ? そうですか??」 N:「うん。高学歴は確かに大企業やお役所という古い世界に就職したい時は圧倒的に有利になる。ま、そ      れでも本当に有名大学を卒業した場合に限ってだけど。事業を起こすのは学歴は一切関係ないね。      日本で有名なところではパナソニックの松下幸之助は中学卒業だし、ホンダの本田宗一郎も高等小      学校しか出てない。ま・・・この人達は時代が違うけど、現代風に言えば大学なんか馬鹿馬鹿しくて途      中で行く気がしなくなったって人達の方が創業に向いているだろうね。マイクロソフトのビル・ゲイツも      アップルのスティーブ・ジョブスも大学に入学したものの、そこで時間とお金を使うのは勿体無いと早      々に退学して事業を起こしている。日本ではライブドアの堀江モンも東大に入学したものの中退して      事業を起こした人だね」 H:「へぇ・・・。そうなんですね・・・。知らなかったです」         HちゃんとNは起業の話などで盛り上がり、本来見学の主賓だったB君はおとなしく話を聞く側になってしまいました。しかもB君は緊張してたのか、スーツ姿でかしこまって普段大食いなのにあんまり食べません。片やHちゃんは普段着で、話に盛り上がりながらも大好物のお肉にかぶりついていました。(クリニック内でもそのたくましさから、「H様」「工場長」などと呼ばれています。) HちゃんはGの自由な社風と社長の常識に捕らわれない考えに共感してGに入ったそうなんですが、さすがに大企業の研修は洗脳から入るので、Hちゃんは「東京まで行くのに机上の空論ばかりで、何度も同じ事を繰り返して意味がないと思いました」と鋭く見抜いていました。Nの会社は本人が常識に捕らわれない変わり者だし、大企業ではないので本当に自由です。業務机一杯にフィギュアや写真なんかを飾っている人もいれば、プログラマーなどは出勤時間もかなり自由で、他にも無意味な規制はありません。大企業のような安定感はありませんが、自分で起業したいというようなバイタリティー溢れる若者は実力を伸ばせそうです。HちゃんはNの会社に興味津々。NもHちゃんの素材や鋭さ、バイタリティーなどを評価していたので、いい方向に進んだらいいなと思います。Nは中国にも近く進出したいらしいし・・・。中国に進出するのはO様曰くとても難しいのだそうで、Nも以前一度試みて失敗したにも関わらず再度挑戦するのだとか。「なぜ山に登るのか?」「そこに高い山があるから」らしいのです。(そう言えばそんな言葉も最近聞かなくなったなぁ・・・。)    しかし日本の若者は、ほとんどが安定した大企業に入りたがりますよね。そして海外に行きたがる人も少ない。若いうちはもう少し冒険して何事にも挑戦し、自分を磨くたくましさが欲しいと思うのですが・・・。私なんかは大学卒業後に十数年勤務医として勤め、ようやく独立して十数年が経過しましたが、中国の若者などは大学の頃から将来は起業したい、世界に出て活躍したいと思う人達が沢山いるという事に感心してしまいます。勿論それは時代の流れが中国の若者をそうさせているという事でもあるでしょうし、生まれて一度も好景気を経験した事がない日本の若者にリスクをとって起業しましょう・・・と言ってもピンと来ないかもしれません。(平成生まれの若者は生まれた時から不況で今も不況な訳ですから、経済が良くなる事を信じろと言われる方が無理なんですよね・・・ホントに。)そうであれば、実は「将来の夢を持ってその夢の実現の為に生きる。失敗しても諦めずに何度でもチャレンジする。そして、チャレンジが成功した時の喜びは何事にも代えがたい」という事を教えるのは私達の世代の仕事なのかもしれません。O様のような創業者はいい加減いい年になっているにもかかわらず、何かにチャレンジする事を全くやめようとしていません。夢を持ち続ける、チャレンジし続けるという生き方そのものを教える役割が私達にはまだ残されているように思うのです。           思えばおせち料理って昔の保存食だし、元々は美味しいって言うよりも大家族が何日間か買い物に行ったり料理をしなくてもいいように考案されて普及したものだと思います。今なんかコンビニでお惣菜は24時間365日いつでも買えるし、ダイエーなんか元旦から開いてる訳ですから、わざわざ保存食を家族そろって食べなきゃいけない動機がありません。それでもこの伝統が残っているのは、単なる保存食を超える美味しさと保存性、そして利便性を追求した人達の努力の結果だと思うのです。(先の冷凍保存技術がなければ、おせち料理は消え失せる運命だったかもしれません。)夢とかチャレンジって何も新しい事をするだけでなく、古き良き風習を少しアレンジして確実に次の世代に継承させる意味もあるんだな・・・って思う次第です。 今年もチャレンジしなきゃいけない事がまだまだ残っているみたいです。(その前に少しダイエットしなきゃ・・・(^^)) 

第118回  (2013年01月)  「スーパースター達の競争 」

あけましておめでとうございます! 昨年は大変お世話になり、誠にありがとうございました。皆様のお陰で開業10周年を迎える事ができ、感謝に堪えません。これからも皆様のご支持を得られるように研究に励みますので、今年も何卒宜しくお願い致します。   お正月は寒いので、引き篭もりがちになった上に御節料理とかを食べては寝る・・・食べては寝る・・・を繰り返す方も多いと思いますので、運動不足にはお気をつけください。かく言う私ですが、去年の秋には開業後初の欧州での学会に参加。十数年ぶりにイタリアへ行き、久々の感動と共に体力の減退を実感・・・。私より100倍元気な70歳のI先生にI体操を教えてもらいましたが、スクワット80回とかあまりにもハードなので断念。その代わり夏の学会で整形外科の女医さんが講演していた、姿勢を良くする体操を始めました。そのせいか、恒例の卓球部のOB戦は好調で、10セットも試合ができて現役部員とほぼ互角(?)に戦え、「先生、大会に出てください!」と言われたし、その後の疲れもましでした。今年も若さを保つために体操と卓球は続けようと思っています。でも年を取ってからの運動って本当に億劫になってしまいますよね。若い頃のように運動したからといってメキメキ体が変わる訳ではないし、体力は増強するどころか維持できれば御の字・・・って感じです。本当に辛抱強く継続しなきゃ駄目だなぁ・・・って思います。   辛抱強くと言えば、ずっとこの通信で書き続けている私の研究も、なかなか目立った成果が出ない事も多く、いたずらに時間が過ぎて行きます。ようやくこの年になって「少年老い易く学成り難し」って言葉が身にしみるようになりました・・・ ^^;)。なかなか成果が出ない時なんか「このまま人生の時間切れが来てしまうんじゃないか・・・」って落ち込むこともあります。そんな時はもっぱら食べる事で気分転換って感じで、馴染みのイタリアンレストランで愚痴る事に・・・(結局それか・・・って感じですが。) 「確かにここも美味しいんだけど、この前に行ったベローナのレストランの美味しい事と言ったらもう・・・凄いんだから」・・・と、どう考えても嫌味を言いに来た、追い返したくなる客としか思えない悪態ぶりにも、流石は接客業一筋のマスターはにこやかに答えてくれます。 「そりゃね・・・そのレストランって創業200年以上なんでしょ。歴史が違いますよ、歴史が・・・。食文化ってそれこそ文化なんだから、一代や二代で本物になる訳ないじゃないですか。もう先生の好きなDNAが変化する位の時間が経たないと本物にはならないんですよ」ってたしなめられました。私も酔った勢いも手伝って 「神戸にも、もうちょっと美味しいイタリアンがあればいいのになぁ・・・」とイタリアンレストランである事を忘れて爆弾発言する始末。でもそこは大人のマスターです。「ですよね。でも、それだったら、和食に行ったらどうですか? 和食は日本の文化の原点ですし、歴史も何もかも違いますよ。それに洋食でも、海外の先生が行ったような特別なレストランのような存在にはかなわないけど、普通にその辺で食べるレストランの味は、日本は世界一でしょう」・・・と。 「先生もミシュランガイド買ったでしょ? 東京は世界で一番星付きレストランの多いところなんです。それにあの程度で星が取れるんだったら、いくらでも星付きレストラン予備軍があるって思いませんか?取材拒否の店なんか含めれば、日本は世界一美食の国である事は知ってる人の間では常識ですよ」     実際にそうなのかもしれませんね。ミシュランガイドの社長さんはフランス人ですが、以前に雑誌のインタビューで下記のように言ってたと思います。 「日本に来て最も驚いたのは、日本食は非常に細分化されてそれぞれが専門職として何世代もの間に引き継がれて来た文化だという事です。基本的にパリで食するフランス料理という形態は東京で食べるフランス料理と素材や内容は違っても同じカテゴリーのものです。それだけでも日本人の外国文化の吸収力に驚かされます。しかし日本以外で食べる日本食は殆どの場合、寿司・天ぷら・焼き鳥・刺身などすべてのカテゴリーの料理を一つのお店が出していて、それが日本食レストランと思っていたのですが、実際に日本に来てみるとそんなお店は大衆居酒屋位しかありません。殆どのレストランはお寿司であればお寿司、天ぷらであれば天ぷら、鰻であれば鰻しか出さない専門職の仕事だった事に驚きました。しかもその天ぷらのつゆや鰻のタレは、何世代にも渡ってその店で守られて改良を加えられた味であって、とても簡単に真似できるものではありません。日本の食文化の奥深さに感銘を受けました」というような内容でした。 なるほど・・・。なんかそう言われると嬉しくなってしまいますよね。さっきまではベローナのレストランの賛辞をしていたのが一変して、「外国の人もその辺の奥深さがようやく解ってきたかぁ・・・」なんて突然、上から目線で教えてあげたくなります・・・(^^)。そうなんですよね。日本って世界一繊細で細かい仕上げを要求されるのでレベルが非常に高いんですが、日本の中にいると周りが全部そうなんでなかなか成果が出ない・・・って悩むんです。でも海外から来たらそのレベルの高さに驚くって話はよく聞きます。       例えば美容の世界でも海外では単に「シワがなくなればいい」って発想が多いのですが、日本の皆さんがそんな事で満足する事は絶対にありません。いかに綺麗にシワが無くなっているか・・・であって、シワがなくなったけど他の部分に影響が出て微妙な顔のバランスが崩れたりしたら、それこそ大クレームもんです。シワの治療にはボトックスという薬剤が最もポピュラーで、こんな劇薬を開発しただけでなく、一般に使っていいよって認可を下ろすパイオニアはアメリカが中心ですが、それをどのように打てば最も綺麗に仕上がるかを研究して実際にうまく打てる医者が多いのは世界でも日本が一番なのではないでしょうか。(それでもまだまだ下手な医者もいるようですが。) この通信の中でも何度も書いてきましたが、ボトックスは美容医療業界のスーパースターです。美容医療業界だけのノーベル賞があれば間違いなくボトックス開発者は受賞していると思うくらいです。普通、薬が効くか効かないかはかなりその人の体質に依存します。しかしながらボトックスに関しては私の経験から言っても9割以上の人に効きます。しかも特定の部分にしか打たないのでアレルギー以外の副作用は殆どありません。副作用と言えば、あまりにも効き過ぎるので、打つ量や部位を間違えると目がしっかり開きにくくなるとか、おでこが重たくなるとか、左右のバランスが崩れて「ブス」になるとか・・・(皆さんが怖がってしまうのでこの辺で止めときますね・・・)なんですが、普通はちゃんと経験を積んだ腕のある医師が打てばそんな問題は起きませんし、100歩譲って多少難点があっても数ヶ月で効能がなくなっていくので、自然な状態に戻ります。また、たいていの副作用は1ヶ月程度で落ち着く事がほとんどです。     実は、長期間効能が続くというのは非常に危険なのです。アートメイクなどで眉毛に刺青を入れる例がありますが、年とともに目尻が下がってくるにも関わらず若い頃に入れたラインはそのままです。結果としてかなり痛い思いをしてそのラインを消さねばなりませんし、完全に綺麗に消えるって事はないのです。その点、多少お金はかかっても、加齢とともに打つ部位を変化させる事ができるボトックスは優れものだと思います。そんなボトックスですが、実は一つの会社だけが開発しているのではなく、そこは自由競争社会の中でより良い製品を作ろうと、各社しのぎを削っているようです。 昨年の寒くなったある日、色白と色黒の2人の訪問者がありました。色黒のお兄さんが「A・ジャパンのWと申します。先生に折り入ってお願いがありまして・・・」A・ジャパンと言えばボトックスビスタを扱っている会社です。エセリスを入れた正直者のFさんと関係のある会社だったので、普段はアポイントなしで来る業者の話は聞かないんですが、少しだけ時間もあったので聞いてみると・・・   W君:「実は私共、きちんとした先生にもっとボトックスビスタを使って       いただきたくて、神戸では先生のクリニックを選んで訪問させ       ていただきました」 柴田:「えー、どうやって選んだんですか?」 W君:「ホームページを熟読したり、近畿一円の先生方にお噂を伺っ       たりしまして・・・」 柴田:「へー。そうなの。でもうちなんかより大手に売り込んだ方が売       り上げ上がるでしょう?」 W君:「それはそうなんですが、まだボトックスの使い方がまずくて副       作用が出たりすることもあって、患者様の不安要素になった        りしているようですので、まずはきちんとした技術をお持ちの                              先生に使っていただきたくて・・・」 柴田:「ふーん。でもビスタは高いもんねえ」 W君:「申し訳ありません。そこで価格もできるだけ下げさせていただいて、他にも先生にメリットのある        ご提案をさせていただきたいと・・・」 彼にもらった名刺を見ると、「ビジネス・ディベロップメント・マネージャー」と舌を噛みそうな役職名です。なんでも、クリニックのビジネスサポートをする係なんだとか。 柴田:「どんな提案?」 W君:「患者様の満足度を上げて、売上に繋がるようなご提案なんですが・・・例えば、患者様に問診票を      書いていただいてどんなお悩みかを聞いたり、施術後に診察に来ていただいて満足度を確認す       るとか・・・」 柴田:「え?? 何それ? そんな事今でもしてるけど?」 W君:「・・・(しばし沈黙)。そ、、、そうなんですか・・・。美容クリニックではされてないところが多いもの          で・・・ 失礼いたしました」 柴田:「そんな事より、ビスタを使って欲しかったら、他の製剤より絶対これがいいよ、っていう事を学術        的に裏付けて欲しいねんけど。高くても絶対に使う価値がある、って納得させてくれないと・・・」 ボトックスビスタというのは、眉間のシワに厚生労働省から認可が下りている、いわばブランドもののボトックスです。しかし価格があまりにも高くて、効果は他のボツリヌス菌製剤もそれほど変わらないと思われていますし、眉間以外には認可は下りていないので、ほとんどの患者様はコスパの良いノンブランドのボツリヌス菌製剤を選ばれます。その日は時間がなかったので、学術的な話はまた次回・・・という事になりました。         そして次の訪問日。W君から電話があり、 「実は今日A(色白の方のお兄さん)もご一緒するはずだったんですが、親戚に不幸がありまして・・・もし先生お忙しいようでしたら、別のお日にちでも・・・」  柴田:「いつも忙しいから今日でいいよ」  私のそっけない返事に、仕方なく一人で来たW君は、めちゃくちゃ緊張している様子です。  柴田:「今日はバッチリ決めてくれるんやろね。で、ビスタが他に       比べて絶対いい点は?」 W君:「は、はい・・・。今まで使われた量が他のボツリヌス菌製剤より圧倒的に多く、文献の数も多いと       いう事と、私共が、クリニックの経営サポートをできるという点と・・・」 柴田:「そういうのはええねんて。製剤的にいい点は?」 W君:「は、はい・・・。ディスポートに比べると、注入点からの薬剤の広がりが少ないという実験結果が        ありまして、そのため額に打った時に眉が下がるなどの副作用が少ないと言われております・・・」 実験結果のスライドを見ると、ディスポートの方が力価(一定の作用を示す量)が1/3なので、3倍量使ったと書いてあります。液量が多いと広がりも大きいのは当たり前なので、  柴田:「これ、同じ液量で測ったんやろね?」  W君:「う・・・。か、確認します・・・。す、すいません・・・!」  柴田:「もう、頼りないなあ。他にいい点は?」  W君:「ボツリヌス菌毒素の回りにアクセサリー蛋白があるので抗体ができにくく、分子量が900kDaと        揃っているので拡散が少ない点で・・・」 柴田:「アクセサリー蛋白があるとなんで抗体ができにくいの? 分子量が揃ってたら拡散が少な             い??」 矢継ぎ早の質問にW君はたじたじで汗ダラダラ。一生懸命答えようとしてくれるんですが、その度に突っ込まれて墓穴を掘っていきます。 W君:「す、すいません・・・!! 実は学術的な事はAの方が詳しく     て・・・」 柴田:「あー、それで日変えようとしたんやね? 来週もう一回来       る?」 W君:「も、申し訳ありません・・・!! ただ、私は本当に先生のお     力になりたいと考えておりまして・・・」 一応国立大学の理学部を出て製薬メーカーにもいたという話の割には学術的には穴だらけでちょっとドジだけど、笑わせるキャラで一生懸命だし、人はいい人みたいです。そして翌週、W君と一緒に来たAさんは結構的確な答を出してくれました。結局ビスタは毒素の回りを蛋白質で包んでいるので蛋白に抗体ができても毒素そのものには抗体ができにくいので、蛋白に抗体ができた場合は製剤を変えればまた効くようになるが、毒素を蛋白で包んでいない製剤は抗体ができると毒素そのものに抗体ができてしまうので製剤を変えても効かないのだとか。また、分子量が他の製剤より大きいので拡散が少ないらしい。ビスタをそっくり真似て作ったニューロノックスとは資料が少なすぎて比較ができないらしいですが、検査と運搬方法がきちんとしているので製剤にばらつきが少ない事などもあり、価格さえなんとかなれば製剤的に悪くはないし、累積使用量と抗体産生の関係など私のたくさんの質問にもある程度答えてくれたので、ちょっと使ってみようかなという気になりました。Aさんは実験が大好きみたいで私と同じ香りがしたし、W君もまだ若くて詰めは甘いけど素地はあるようだし・・・。美容の世界で学術的な話ができる人は極めて少ないので、こういう人達とボトックスについて語り合えば、新たな発展がありそうで面白い気がしたのです。           「ありがとうございます!! 何とか先生のお力になれるように頑張ります!!」 W君の安心した笑顔とビッショリの汗が印象的でした。 表情筋を切って動きを止めるとシワがなくなって若返るという手術もあるくらいで、双子でボトックスを13年間使い続けた方と使っていなかった方はシワが全然違ったという報告もあり、ボトックスも、もっと活用されてもいいと思うんですよね。しかし世の中にはまだ下手な医者も多く、「効き過ぎて怖い顔になった」「ボトックスは表情がこわばるからいや」と患者様の不安の原因にもなっているようです。 その不安を少しでも緩和できて、若返りのお手伝いを出来ればと思っています。   美容医療界は食文化などに比較すれば非常に歴史の浅い世界です。まだまだ分かってない事も多いですし、改良の余地も多く残っていると思います。いろいろな治療方法が出ては消えする状況もありますが、その中でも本当に良い物は残って長い歴史を作り、さらに洗練されていくのでしょうね。長い歴史の中で見ると自分のできる事は本当に点でしかないかもしれませんが、少しでも良くなる可能性があれば、それにはチャレンジしていきたいと思います。もしかすると100年後はシワはシワ専門家、シミはシミ専門家・・・って美容医療界も専門分業しているのが当たり前になっているかもしれないですね。 チャレンジに疲れた時は歴史ある食文化に触れて自分を癒しつつ・・・(^^) 今年も何卒、変わらぬご支援とご鞭撻をよろしくお願い致します。

第117回  (2012年12月)  「ノーベル賞の裏側で 」

こんにちは。柴田美容皮膚科クリニックの柴田です。最近は朝や夜は冷え込んで来ましたね。紅葉の季節も真っ盛りという事で紅葉狩りに行かれる人も多いと思います。日差しも柔らかく長時間外にいても気持ちがいいのですが、この柔らかい日差しが案外大敵なんです。夏の直射日光を浴びて平気な人は流石に最近は少なくなってきたのですが、この時期の日差しはつい油断して日焼け止めも付けずに長時間あたる人が多く、結構日焼けする人が多いんですよ。せっかく気持ちのいい行楽日和なんで外出は大いに結構なのですが、やはり日焼け止めはこの時期こそ忘れずに持って行ってくださいね。   最近の話題と言えば、日本人では19人目になるというノーベル賞がiPS細胞を発見した山中先生に授与されました。医学生理学賞の分野では日本人では25年ぶりで2人目なので、もう大快挙だと思います。よく風邪を治す方法を発見したらノーベル賞だとか、癌を治すことができればノーベル賞ものだという言葉を聞きますが、iPS細胞はそんな今すぐ難病が劇的に治るというような発見ではなく、あくまでも「今後の研究によってはものすごい事ができる可能性」を発見したという事になります。ただし、この「可能性」があまりにも凄くて世界に与えるインパクトが大きく、若干50歳でノーベル賞の栄誉に輝いたのです。勿論、山中先生も国家試験を通って医師免許を持ったお医者さんなんですが、私のような臨床医師とは全く違う分野で活躍されています。(違うのは当たり前や・・・って思われるでしょうが、あくまで分野の話をしているのであって、頭の構造の話をしている訳ではありません・・・あしからず・・・^^;)山中先生は我々の世界で言うところの「基礎」という分野の人です。「基礎」とは「基礎医学」の略で、解剖学や生理学、病理学や薬理学など、人体の構造や機能、疾患とその原因など、医学研究の根拠となる知見を得るための学問分野です。大きな病院に行くと「脳外科」とか「整形外科」「内科」と言った標榜科に分かれており、それぞれの科に専門医が在籍していますが、それらはみな「臨床医学」の分野です。「基礎」の分野は一般の臨床医学の分野と違って、大学とか研究機関などにしかありません。いわゆる患者さんを診察して病気を診断して、治療を行うのを臨床といいいますが、「基礎」と呼ばれる分野はイメージとしては試験管とプレパラート、集められたサンプル、そして動物を主に相手にして研究しているお医者さん(研究者)です。彼らは普通は病院にいるのではなく研究機関にいて、病院から運び込まれた標本(サンプル)などを色々な角度から分析して、病気の原因や問題の本質を突き止めようとしたり、純粋に研究者としてマウスの皮膚に発ガン性物質を塗ってガン化させた細胞をプレパラートに取り出して、色々な薬剤を入れてガン化した細胞の増殖を抑制する物質を見つけたり・・・てな研究をしている訳です。    私が大学の医学部にいた頃からそうでしたが、ほとんどの学生は臨床医(いわゆる一般のお医者さん)を目指して医学部に来ます。そして実際にほとんどの人が臨床医となって各病院に巣立って行きます。そのような中でごく一部の人が「基礎」という、どちらかというと研究職に近い分野を選択します。勿論、「基礎」の皆さんがしっかりとした治療の論理と裏付けをしてくれなければ臨床における治療は成立しない訳で、文字通り「基礎」なんですが、一般的な臨床医とはかなり違う世界で、ひたすら地味な研究を続けて日の目を見る事が少ないというイメージがあり、やっぱり外科をはじめとした華やかな臨床医の世界とは一線を画しています。(私が勝手にブラック・ジャックを華やかな世界と勘違いしているだけなのかもしれませんが、白い巨塔をはじめとしてドラマや映画に出て来るお医者さんはほぼ100%臨床医です。ごくごく稀に法医学という、遺体を解剖して残された証拠から犯人を暴くという世界が紹介されますが、あれはホントに例外ですね。それに法医学の先生には申し訳ないですが、ドラマに出て来るようなキャラの先生にはお目にかかった事がありません。映画ではかなり脚色が入っていると思いますねぇ・・・。)     そんな世界なので、「基礎」という分野は学生の頃から「ちょっと変わった奴」が進む道と思われがちでした。手術を中心とする外科の世界は治療の基本となる論理をしっかり身に付けているだけでなく、手先が非常に器用で「技」と「経験」がないとできません。それに一歩間違えば人が死ぬわけですから、大きなリスクをとってその手術の実施決断をしなければなりませんし、大きな手術となれば麻酔科の先生をはじめとして複数の専門家を束ね、チームで推進しますので、グループに指示を出すリーダーシップも必要です。突然患者の容態が変化した場合でも冷静に的確な指示を出さねばならず、常に鉄のような冷たい冷静さと人間を助けたいという温かい人間味の両方を持っていないといけないのです。そんな訳でドラマの主人公に最もなりやすい立場である事は間違いありません。一方で「基礎」の世界はその真反対にあると言っても良い地味な世界です。 山中先生の逸話として有名なのは、彼は最初整形外科に入ったのですが、手術を器用にこなすことができず、先輩の先生から「ジャマ中」とあだ名を付けられたという話です。そんな不器用な自分は臨床医は向いていないと考え、基礎の分野に進む事になったという話が連日ニュースで伝えられていました。(その「ジャマ中」ってあだ名をつけた先輩はどんな気持ちで山中先生のノーベル賞受賞のニュースを聞いたんでしょうね・・・(^^)。)まぁ・・・有名になった人の逸話なんでどこまで本当なのかはわかりませんが、私が知っている中にも不器用で手術などに向いてないとか、人の相手をするのが苦手で基礎に行ったという人も実際にはいました。そのような地味でどちらかというと目立たない人達の中で、山中先生のようにノーベル賞受賞者が出るという事は、基礎の皆さんには本当に「きら星」のように輝く存在だと思います。人間は持って生まれた特徴を活かす事が重要であって、いたずらに派手な世界を追いかけるのではなく、自分に与えられた役割をしっかり果たして行く事で時間をかけても成果が出る事があるのだ・・・という事を改めて思い知らされる嬉しいニュースだと思います。当院にアルバイトに来る医学生の中にも、たまに不器用で臨機応変に対処ができず「臨床医はやめといた方がええんちゃうかなあ」と思う子達がいますが、彼らにも希望の光が見えた気がします。 ところで、私も山中先生には及びませんが、(そんなの当たり前だが・・・)地道な研究は日々進めています。ちょっと氏にあやかって最近の研究を紹介してみたいと思います。先日から、イタリアから仕入れたシミを薄くする注射の実験をしています。イタリア産シミ注射はホワイトインという名前の注射で、1~2週間に1回のペースで5回くらい打つとシミが薄くなると言われています。シミ治療はレチノイン酸療法が抜群に効果がありますが、レチノイン酸クリームは刺激が強いので、お肌が弱い方にはアレルギーを起こしたりするリスクがあって使いにくい面があり、シミ用の注射があるとそのような方への朗報になる思います。しかしホワイトインはメラニンの産生を抑制する成分が主体なので、メラニン産生抑制剤ならクリニックでも使っているビタミンCやトラネキサム酸・美白剤などでもいいんじゃないの?それに細胞を活性化してメラニンの排出を促進するビタミンAなどの薬剤を混ぜれば最強なんじゃない?などと考えて、それらをカクテルしたシミ用の注射を作り、ホワイトインと比べる事に。実はずっと前にもシミ用の注射を作ろうとして実験した事があるんですが、効きそうな薬剤を全て混ぜたらボコボコに腫れた上にあんまり効果がなかったり(モニターをしてくれた製薬会社のMRさんが、草野球のコーチをしていて毎週日焼けしまくっていたせいかもしれませんが・・・)、シミ用のメソリフトを作ろうとしてうまくいかず、やっぱりシミにはレチノイン酸療法の方がいいや、と実験を中止してしまった事があります。なかなか大きな声では言えませんが、皆さんに正式にメニューとして出す前に、色々な実験台になってもらった皆さんがいて(勿論、本人にはリスクを説明してそのリスクを承知の上で実験台になってもらう訳ですが)時には「ありゃ・・・これは申し訳ない事したなぁ・・・」って事だってあります。通常は自分でまず試してから、本当に親しい知り合いの人などに協力してもらい、一定の成果と安全性があると思えるとモニター募集をして実地検証します。そんな訳で私の親しい知り合いやクリニックのスタッフの皆さんには災いが時に振りかかる事もある訳です・・・^^;)。それに以前は安全性と効果だけを追求していましたが、最近は皆様より痛くなく、ダウンタイムの短い治療を望まれるので、それも考えながら研究しなくてはいけません。それで今回はあんまり日焼けしない人をモニターに選び、明らかに腫れると分かっている薬剤は除きました。 そしてまず私とスタッフYちゃんが試す事に。薬剤のpH(酸性度)が低いと痛いので、それぞれの薬剤のpHを測定し、薬剤を混合した注射液のpHが7以上になるように調整しました。しかし実際に打ってみると・・・「痛―ッ!! これは最強に痛い!! PRPより痛いよー!!」こらあかん。どうも注射の痛さの原因はpHだけではないようだ。そこで痛いと思われる薬剤を一つ抜いてみました。しかしまだ痛いし腫れる。うむ・・・原因はどいつだ?? 薬剤を一つずつ個別に打ったり、いろいろな組み合せを作って打ってみました。すると今使っている薬剤の中でメラニンの産生を抑制するものは全て痛いし腫れる事が分かってガックリ。中には打つと赤くなるものも。仕方なくホワイトインだけを打ってみました。これもちょっと痛いしちょっと腫れます。まあ今回作ったシミ用注射よりは全然ましだけど。メラニンの産生を抑制する薬剤であまり腫れずそれほど痛くないのはホワイトインだけになってしまったので、それに細胞を活性化する薬剤を混ぜてみました。細胞を活性化する薬剤は、アイリペアカクテルやリフトアップカクテルを作る時に実験しまくって腫れなくて痛くない薬剤が分かっているのでそれを混ぜると、なんと! ホワイトイン単独よりも腫れないし痛くないではないか! あとは何回か打ってみて、効果を確認すれば・・・。皮内に浅く打つと腫れるのでまだ研究の余地はありますが、何回も挫折したシミ注射にも一筋の光が見えて来た感じがします。そんなこんなでうまくいってない研究のネタは沢山あっても、うまくいってる研究って本当は非常に少ないのです。それでも諦めずに前進あるのみ・・・です。 ノーベル賞と言えば、あらゆる生物のDNAの構造が二重らせんであるというモデルを考え出してDNAの研究を一気に発展させ、今世紀最大の発見とも言われたその功績からノーベル賞を受賞したD・ワトソン博士がいます。彼の書いた「二重らせん」という書籍がこれまた世界的なベストセラーになりました。この本は研究の中身を書いた本というよりはノーベル賞レースの裏側であるドロドロした人間関係を描いた暴露本と言ってもいいようなもので(週刊誌の暴露ネタよりは随分高級なお話ですが・・・(^^) )、研究の内容が解らなくても楽しく読める本です。)ノーベル賞という、誰かが受賞してしまえばその分野で重複受賞する事がない最高の栄誉を誰が手にするかというレースの中で起きる、人間の本性丸出しの競争の裏側を描いています。研究の世界って非常に狭い世界で、協力と競争の微妙な間で複雑な人間関係が交差するので、実はドラマとしては格好の場なんだな・・・って改めて思います。(その事を知り合いに話したら「そりゃ・・・狭い世界のドロドロした人間模様ってスタジオのセットも少なくて済むし、ロケにも行かなくていいし、安い制作費で奥様達の心をがっちりつかめるんだからテレビ局には都合のいいドラマだね。その点、大河ドラマなんてお金かかって仕方がないからNHKくらしか作れないでしょ」って言ってました。そうか、そんな現実もあるのか・・・^^;)    私は大学の医局を辞めてもう十数年になるのでその世界からは全く無縁になったのですが、最近ある用事があり、大学時代の先輩に連絡を取りました。その先輩はまだ大学の医局に所属しており、このドロドロした世界を現役で突っ走っている訳なんですが、「ここだけの話やけどなぁ・・・」って事で教授選の裏話を聞いて、もう目を丸くして驚きました。まるで白い巨塔の話を地でいくようなドラマがそこにはあったようです。「絶対に他では言うなよ・・・」って口止めされて9るので、この通信に内容を書けないのが残念・・・こんな面白い話なのに・・・(^^)。(ああ、誰かに言いたい・・・! 興味ある方には今度こっそり教えちゃいますね・・・^^;) 大学という世界は教授とそれ以外は天と地ほどの差があると言われているので、教授になる為にはもう色々な努力が影でされますし、時には対立候補を落とすための画策もされたりする訳です。山中先生も大変なんでしょうねぇ・・・そんな世界にいて、しっかり成果も出すなんて。特に基礎って研究するにはかなりの費用が必要なんで、予算を下ろしてもらう為にも相当な政治力が必要なんじゃないかなぁ。研究費支給の審査の面接をした人が、山中先生の迫力に感心したという話もありますが。私なんかは小さなクリニックを運営しながら、自分の信念だけで自分の考える地道な研究に打ち込める事はある意味幸せなんだな・・・と思います。勿論、大きな研究施設がある訳でも研究費の助成がある訳でもないですが、自分に与えられた役割を認識してしっかりそれを果たして行きたいと思います。明日こそ良い結果がでる事を信じて・・・。    

第116回  (2012年11月)  「ワインは現地で飲むのが一番? 」

こんにちは。柴田美容皮膚科クリニックの柴田です。最近はすっかり秋めいてきて夜風も涼しく、時折鈴虫の音色も聞こえてくるようになりましたね。皆様はいかがお過ごしでしょうか? 街中を見渡してもファッションに敏感な一部の人はダウンとかファーのついた衣装を着て颯爽と歩いている人もいますね。(なんぼなんでもまだ暑いでしょうに・・・^^;)そうかと思えばTシャツに短パン&サンダルという夏真っ盛りの人もまだまだいますし、季節の変わり目は逆に街ゆく人々を眺めているだけでも楽しいものです。 さて、先月のクリニック通信にも書いたのですが、9月には欧州皮膚科学会がイタリアのベニス・リド島で行われたので参加してきました。そのため一週間もクリニックをお休みしてしまい、皆様にはご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした。今回の学会出席は急遽決めたこともあって準備がなかなか追いつかず、本当に出発の前日まで診療の方もいっぱいだったので、実は予備勉強が直前までできない状態のまま出席する事になってしまいました。   なんか学会のネタが続いて恐縮なんですが、単にイタリアに遊びに行って来たと思われてもなんですし(しっかり楽しんできたのは事実だが・・・(^^))、ご存知ない方のためにちょっと解説しておきますと、学会に出席する人には大きく分けて3つのグループがあります。一つは研究専門の研究者グループ。そしてもう一つは診療ばかりしている臨床医師のグループ。そして、大学病院のようにその中間で臨床もするし、研究もするというグループです。私はどのグループかと言うと臨床医師のグループに入りますが、その中でも少しばかり大学よりの、臨床研究(モニター試験など)も行っている小グループの中にいるという位置付けになると思います。そして臨床医師の場合は、学会でのもっぱらの興味は臨床で役に立つ情報になります。例えば、ボトックスを患者さんのこの部位に打つと効果がなかなか出なかったのに、この部位でこの薬剤と一緒に打つと非常に高い効果が得られた・・・というような発表ですね。このような非常に価値の高い情報に一つでも出会う事ができれば、もうその学会に出席した価値ありという事で、交通費から宿泊費、そして参加費用を含めて一気に元を取ってしまいます。(・・・すいません。下世話なお話で・・・)    ところが逆に研究を専門にしている人達の発表はいわゆる基礎研究と呼ばれる分野の事が多くなります。一言で言うと試験管の中で何が起きたか、もしくは動物実験でこのような事が観察された・・・って話です。確かにそれは凄い発見だという事もありますが、それが応用されて新薬になるのは早くて3年後とか、恐らく5年以内には目処が立つかもしれないというような研究だって沢山ある訳です。そうなると私達のような臨床医師は、学術的興味は持てても「またその時ね」って感じで受け流してしまう事が多くなります。そして、今回の欧州皮膚科学会はと言うと・・・。残念ながら殆どの発表が基礎分野だったのです。それが分かったのが飛行機やホテルの手配を済ませた学会直前。学会のホームページにプログラムや抄録集が掲載されるのが遅かったというのもあるんですが・・・。この学会に誘ってくれたI先生に「あれれ? 先生は臨床もあるって言ってたのでは・・・?」って問い詰めたら「あ・・・そうですね。今回は非常に少ないですね。前はもっとあったように思ったんだけど・・・。あれ? でも柴田先生はプログラムをチェックして来なかったんですか?」(・・・うう・・・出発直前までバタバタして見られなかった・・・) 確かに言われてみれば自分で勝手に臨床もあると想像していただけなんだが・・・。勿論、臨床発表も若干はありましたけど。しかしポスターによる研究発表は非常に多かったです。総計770題ものポスター発表があり、とても見切れません。成長因子に関連する発表だけでも34題、毛髪・皮膚・幹細胞関連で42題、光老化関連で33題。世界中でこんなにたくさんの研究がされてるんだという事だけでも刺激にはなります。紫外線によるシミ・シワ・たるみの発生など光老化を防ぐ物質の研究も盛んで、ビタミンEや大豆エキス・ヒートショックプロテイン(細胞が熱等のストレス条件下にさらされた際に発現して細胞を保護するタンパク質)などの研究発表が面白く、当院の研究にも応用できるのではと思いました。企業のブースもすごく少なかったんですが、なんとかイタリア製のシミを改善する注射や、フランス製の注射前後に使える化粧品などの情報を手に入れたので、これらはまた当院でも導入していきたいと考えています。     ところで今回はせっかくイタリアに行ったので、ちょっとそのお話を。今回はおよそ10年ぶりのイタリアです。私の同級生にはもうイタリアに魅せられて、かれこれ40回以上行ったという強者もいます。(その人から聞いた現地のディープな情報は今回の旅行に大いに役立ったのですが・・・。)前回私が行ったのはミラノだったのですが、確かに大いに魅了されたのを覚えています。ヨーロッパは得てしてそうなのですが、どうして街並みとか田園風景とかレストランとか・・・あんなに私達を魅了するのでしょうね。特に女性はハマっちゃう人多いですよね。アジアの国と違って、ゆったりしていて長い歴史が至る所で感じられて、人々は大らかで親切だし、人生を楽しむ事にかけては遥かに私達の先輩のような気がします。そして何より食べ物が充実していて、レストランなんか2時間くらいかけて楽しむなんて当たり前・・・なんですよねぇ。(もっぱらここに私が魅惑されるポイントがあるのだが・・・。)私もまだ古き日本人が持つヨーロッパコンプレックスが心の底にあって、「あぁ・・・なんでここはこんなにお洒落なんだろう!!」って思います。抜けるような青空が広がり、カフェで一杯のエスプレッソを片手に行き交う人々を見ているだけで楽しいし(こっちの人は本当にバラエティ豊かですね。それぞれの人が思い思いに恋人との時間やファッションを楽しんでいるって感じです)、こんなゆったりとした時間を贅沢に過ごしている自分までもが映画のワンシーンに登場しているような錯覚に陥ります。一体これって何なんでしょう? そして素敵な人たちとの出会いもありました。ベニスの小さなレストランで韓国から来た皮膚科医の若い先生たちやカナダから来たおじさんたちと相席になって英語で話が弾んだり、学会のギャラパーティー(祝賀パーティー)でスウェーデンから来た研究者の人たちと知り合いになれたり・・・。リド島では地元の人に聞いて行ったレストランが生の魚介がめちゃ美味しかったんですが、ウェイターのおっちゃんがまためちゃ親切で、プロセッコ(イタリアのスパークリングワイン)をグラスで頼んだのにカラフェでサービスしてくれたんです!(美味しいものとサービスに弱い私はこの店がすごく気に入ってしまいました。)そしてリド島のホテルのフロントやレストランの親切なお姉さんやおばさん、ホテルで偶然一緒になった学会関係の偉い先生たち。中でも帰りに「ホテルから空港まで水上タクシーを予約したから一緒に乗って行かない?」と誘ってくれたハンガリーの綺麗な女医さんと、一緒に水上タクシーに乗り合わせたスイスの皮膚科の先生はすごく親切で、女医さんは水上タクシー代をおごってくれたし、スイスの先生はホテルからずっと荷物を運ぶのを手伝ってくれたんですが、なんとその人はスイスの有名な大学の教授で、2年前の欧州皮膚科学会の会長をした人だったんですね。めちゃダンディーで優しくて、ヨーロッパって大学教授でもこんな素敵な人がいるんだなあ・・・もう映画そのもの!(それに引き換え日本の大学教授達ときたら・・・もう何なの?この違いは?? あんまり大学の先生を敵に回したくはないので詳しくは述べませんが、素敵な人なんてめちゃ少ないし、中には同じホモサピエンスとは思えない人も・・・あ、言っちゃった・・・^^;) それから、せっかくベニスに行くんだったら車で2時間位のところにベローナって素敵な街があるので、是非そこに行った方がいいと友人に強く勧められました。そこで、学会が半日で面白そうな演題がない日があったので、その日だけは学会をサボってベローナに観光旅行です。皆様の中にもご存知の方はおられると思いますが、ベローナと言えばあのロミオとジュリエットの舞台となったバルコニーのお家がある街です。ちょっと贅沢して運転手付きのレンタカーを借りて、朝から出かけました。綺麗な田舎の道を2時間弱走ったところにその小さくてお伽話にでてくるような街はありました。まずのお目当てはベローナの街で最古と言われているレストラン「Antica Bottega del Vino」。なんでも創業500年の老舗だそうです。500年前って事は、2012-500=1512年・・・。日本では室町時代、その頃にはもうこんなに素敵なレストランがあったんですねぇ。   レストランの地下はワインのカーブになっていて数千本のワインが眠っています。なんでもローマ時代の遺跡をそのままカーブにしたとかで、ローマ時代の城壁の跡をうまく利用して天然のクーラーになっていて中はとってもひんやり・・・。勿論、レストランのお料理はボーノボーノ! ワインがこれまたボーノボーノ!!(唯一知っているイタリア語を連発で、典型的なお登りさんになっている・・・^^;)グラスワインだけでも50種類から選べるなんて尋常じゃないですよ。その中でソムリエさん一押しの赤「アマローネ」を注文したところ、もう忽ち虜に・・・。これぞワインですよ。しかもそのお店で一番高いグラスワインだったにもかかわらず約1000円程度。日本のレストランも見習え!! と喜びと怒りと半々でとっても楽しいひとときを過ごしました。そこでお土産にそのワインを買って帰って来たのは言うまでもありません。その後はファンタジーに出て来るような街中を散策し、歴史と文化に触れ、本当に有意義な一日を過ごすことができました。いや・・・充実充実。  まぁ・・・そんなこんなで、ここでは書ききれないほど色々な事があって、名残惜しいイタリアを後にして帰路についたのでした。そして、ようやく我が家に到着。もう疲れてクタクタ・・・。ベットにバタン。そこで独り言。 「ああ・・・やっぱり日本が一番・・・」 あれあれ・・・。やっぱり寄る年波には勝てないのでしょうか。子供の頃に数少ない家族旅行とかに行くと必ず母親が言ってたなぁ。「ああ・・・家が一番」って。私もその年になったのか、はたまた同じDNAを引き継いでいるからなのか。いや・・・やっぱり純粋に日本は日本の良さがあって、客観的に世界一って思える事が多いんですよ。皆さんも海外旅行から帰ってそう思った事ありませんか?もっと言えば客観的事実に基づかなくてもいいんです。日本に帰ると落ち着くんです。何なんでしょうね。この感覚は・・・。そりゃ、街並みはお世辞にも美しいとは言えないし、至る所が人で混み合っているし、人生楽しむ事を知らないまま働き続ける人も多いし、ワインは高いしダンディな大学教授もいないし・・・。でもやっぱり生まれ育った環境って、成人してからのその人に与える影響は大きいんですよね。いえ・・・そうではなく幼少期に与える影響が大きくて、その影響下の中で構成された体はその後は何歳になってもその影響から逃れられない・・・って事の方が正しいのでしょう。      これってその土地が持つ空気なのか、湿度なのか、そこに生えている植物なのか、微生物なのか・・・はたまたそこに住んでいる人間そのものの影響なのか。ベローナで飲んであれだけ感動したワインも、日本に持って帰って来ると「確かに美味しい・・・でもあの時の感動とちょっと違う・・・」んですよね。間違いなくソムリエさんがあのワインカーブから出して来たのを見たので、物は同じはずなのに。逆に日本の樽酒のような冷酒を日本で飲むととっても美味しいのに、同じお酒を外国で飲むとそうでもないように思います。今回、国際学会で仕入れて来た知識や論理は国境を超えて役に立つ原理原則なんでしょうけど、実際に臨床の場に役立てるには、そのままでは駄目だなって思うんです。人種や体質、育った風土、そして個人の精神状態までも考慮に入れないとベストな治療なんてできないと思う訳です。フランス人にフランスでは良く効く薬でも、日本にそのまま持って来て日本人に投与しても同じ効果が出る訳じゃないっていうのが不思議です。まだまだ、研究の余地ありか・・・。先は長いようですが、今回仕入れた知識や情報を基に研究を進め、皆様のお役に立てるものを作っていきたいと思いますので、今後とも宜しくお願い致します。    

第115回  (2012年10月)  「生活の知恵」

こんにちは! 柴田美容皮膚科クリニックの柴田です。やっと涼しくなりましたが、今年の残暑は本当に厳しかったですねえ。皆様はお元気でお過ごしでしたか? 私はこの夏は、神戸より暑い名古屋で行われた美容皮膚科学会に参加しました。この学会は毎年「なんでこんな暑い時期に?」という時期に開催されます。暑さに負けない勉強意欲を試されているとしか思えませんが…。神戸の花火大会の日にあったり、毎年8月が多いのですが、去年山口で開催された時だけ9月でした。その理由はふぐの解禁を待ったからとのこと。やっぱり医者って食いしん坊が多いんですね。(私だけでなくて良かった…(^^)。)ふぐには惹かれたんですが、去年は9月に美容外科学会もあったし、美容皮膚科学会はちょっとマンネリ化してきた感じだったので参加しませんでした。しかし今年2年ぶりに参加してみると、なかなか面白い話題が多くて、久しぶりに実りのある学会でした。   まず面白かったのは、皮膚の幹細胞の話です。今話題の幹細胞とは、自己複製能(自分で増殖する力)と多分化能(いろいろなタイプの特殊な機能を持つ細胞に変化する力)を持つ細胞の事です。いろいろな細胞に変化する事ができる話題のES細胞やIPS細胞も幹細胞の一種ですね。今までは脂肪の幹細胞の話題は良く出ていたのですが、今回の学会では皮膚の幹細胞の話題が出て来ました。皮膚の老化と幹細胞の関係については今まで不明な点が多かったのですが、今回は皮膚にも幹細胞が存在する事を証明し、さらに加齢により皮膚の幹細胞の数が減少する事を確認したという発表がありました。つまり皮膚の幹細胞の減少によって皮膚の再生能力が低下し、様々な老化現象を引き起こしている可能性があるという事です。この皮膚の幹細胞を増やす事ができれば、老化を防いでお肌を若々しく保てるという事ですよね。すでにPRPは間葉系幹細胞(真皮・脂肪・軟骨などに分化できる細胞)の増殖を促進するという実験結果があり、PRPが放出する成長因子の一つであるFGFにもそういう効果があると予測されるので、この報告は今後の研究におおいに役立ちそうです。    もう一つは白髪に関する研究の話です。私も何年も前から白髪の予防や治療にはすごく興味があったんですが、世の中の研究はハゲ一辺倒で、白髪に関しての研究は少なく、なかなか文献も見つからなかったんですよね。白髪は染められるからでしょうか。しかし近年白髪の研究も進んできて、そのメカニズムも明らかにされつつあるようです。これも幹細胞に関連する話題なのですが、毛根を包む毛包という組織の中に色素幹細胞という色素細胞に分化できる細胞が存在し、色素幹細胞が減ると毛根の基部にある毛母の色素細胞も減少して白髪の原因になる事を証明した報告がありました。さらに色素幹細胞の維持には毛包幹細胞が必要で、その維持には17型コラーゲンやTGF-βが必須であるという事が解明されたそうです。17型コラーゲンの欠損は白髪だけでなく脱毛の原因にもなるという事で、今後の研究が期待されます。TGF-βという成長因子はPRPにも含まれるので、PRPを白髪に打ってみようかなあ、と考えています。  あと興味深かったのは、喫煙と皮膚の老化の関連を証明した報告でした。タバコがお肌に悪い事は理論的・経験的にはもう常識となっていますが、統計的・実験的に証明した報告は少なかったのです。それが今回の報告で非常に明解になりました。年齢・喫煙・紫外線とシワの形成の統計を取ると、それぞれがシワの形成に関与する事が明らかになり、年間35箱以上タバコを吸う人は、吸わない人の5.8倍シワができやすかったそうです。また、タバコの煙を水に溶かして培養線維芽細胞に加えると、コラーゲンの産生が抑制され、コラーゲンを分解する酵素の産生が増えたとの事。そしてタバコの煙抽出液によって増えたコラーゲン分解酵素はポリフェノールの一種であるフラボノイドで抑制されたそうです。タバコはやっぱりお肌にすごく悪いんですね。一生懸命シワの治療をしても、タバコを吸っていては効果が半減してしまうという事です。どうしてもタバコがやめられない人は、フラボノイドを摂るといいのではないでしょうか。当院で扱っている「夢美人」は、ミロエステロール・ダイゼイン・ゲニステインなどのフラボノイドをたっぷり含んでいるので、タバコがやめられない人のシワ予防に効果がありそうです。     さて話は変わるのですが、学会会場でお会いしたI先生とA先生に、ベニスである欧州皮膚科学会に一緒に行かないか、と誘われました。今回の学会はいろいろ情報収集ができましたが、そろそろ国内の学会には限界を感じて来ていて、海外の先端情報収集が必要だな…と思っていたところだったので、この機会に行こう!と決心しました。しかし急だったので飛行機の手配などがバタバタ。何しろヨーロッパに行くのは12年ぶりなので一人で行くのはちょっと不安で、I先生たちと同じ便を取ろうとしたのですが、日にちが迫っていたので結構値段が高い。高校の同級生でイタリアに40回行った事があり、今でもイタリアから商品を輸入する会社をしている友人に聞いて飛行機やホテルの手配をしたんですが、今は海外のホテルの予約もネットで簡単にできるんですねえ。12年前とは時代が完全に変わったなあと感じました。そして航空券の価格が日によって変動する事も判ってびっくり。親切な旅行会社では、「今日はもう少し安い航空券が取れますが」と連絡してくれたりします。(今時当たり前?なんでしょうね…ちょっと時代から取り残された感じですが…。) 学会はベニスのリド島であるのですが、小さな島なのでホテルも結構いっぱいで、I先生たちと同じホテルは1泊目しか取れませんでしたが、飛行機はなんとか同じ便が取れたのでA先生に報告すると、「それは良かった。一緒にイタリアワインを飲みましょう! …あ、そうそう、I先生はものすごく歩くのが速いので、ヒールはやめて歩きやすい靴で来てくださいね。僕は家内も連れて行くんですが、そのために今一緒に速歩のトレーニングをしてるんですよ」…と。なぬ??! I先生と言えば、70歳近いお年のはずだが…。しまった!! T薬品の研究室のK君やOさんが、I先生と一緒に六甲山縦走に行って「I先生の歩くスピードについて行けなかった…^^;)」と言ってたのを忘れてた! そして普段はトレーニングのためにリュックに石を入れて歩いておられる事も…。うむ…私は最近は運動不足で歩くのは超苦手。国内の学会に行っただけでもめちゃ疲れて翌日の仕事も大変なのに、ついて行けるだろうか…。慌ててスタッフのYちゃんに同行を頼み、また航空券の手配をする羽目に。2人だとハードな速歩からしばし逃れて休む事もできるかも…と思ったのですが、どうなる事やら。またイタリアの学会報告と共に珍道中の報告もしますので、楽しみにしていてくださいね。…しかしI先生は元気だなあ。「生きてる限り最前線でいたい」と言われていたのが印象的でした。私もできる事ならそうありたいと願っています。(そのためには速歩のトレーニングが必要かな。) このクリニック通信でも過去に何度も学会の裏話を書いているのでお気づきの方も多いと思いますが、今回の国際学会もしかりで、学会っていうのは大抵観光で有名なところかその国を代表する大都市、もしくはリゾート地で行われます。(リド島はイタリアでは有名なリゾート地ですね。)一つの理由は学会のために遠方から沢山の人が集まる事で、多くの人を収容できる会場やホテルが必要なので、そのような場所でないと実際には学会を開くことができないという実情があります。もう一つの理由はやはり「せっかく遠方に行くのだったら空いた時間に美味しい物が食べられたり観光できたら一石二鳥」って心理をついて、沢山の人を集めようという主催者の意図があるのは間違いないと思います。特に大きな病院や大学の勤務医の皆さんにとっては、学会は公に病院や研究所を一時でも離れる事ができる唯一の「口実」であったりもします。私もかつては勤務医でしたので、一応勤務医の名誉の為に申し上げますと、殆どの真面目な勤務医の皆さんは非常に忙しく、自宅と病院や研究所の往復に人生の殆どの時間を費やしています。もうそれ以外の世界には殆ど触れる暇がないと言っても過言ではないかもしれません。そのような中で唯一外の世界や外部の人に触れる機会が学会なんです。しかも、年に1~2回であれば学会出席という理由で1週間前後のお休みを取る事ができます。(流石にそれを認めない大きな病院や大学はないみたいです。)そんな事情もあって、主催者側はできれば本人だけでなく、家族の方もご一緒に来てください…ご家族の皆様には別のアトラクションもありますから…というような場所で開催される事が多いようです。   ところで皆さんは学会で何か発表をする人にはどんな報酬があるか知ってますか? 学会には単に参加して情報収集する人が大半なんですが、当然ながら多くの聴衆を前に自分の研究発表をする人達もいて学会が成立します。私の勤務医時代の経験で言えば、学会参加は大抵自腹です。往復の交通費はもとより、宿泊費や学会の登録費用(これが意外に高いのです。海外の学会は特に高く、10万円前後かかることもざらにあります)などを個人の収入の中から支払いしなければなりません。一部の研究機関などでは法人が支払ってくれるケースもありますが、普通の病院や大学ではそんな事は殆どありません。ま…それでも聴衆として参加する人達は、学会で他人が時間とお金をかけてやってくれた研究成果を聞ける訳で、自分への投資と思えばそれも割り切れます。しかし、研究発表を行う人達は他人に成果を教える訳ですから、学会費用の一部が報酬として支払いされても良さそうなもんですが、実際には殆どのケースは無報酬なんです。よほど有名な先生が人集めの為にゲストスピーカーとして呼ばれた場合や、以前私がPRPの発表をした時のように学会長の依頼という場合などは報酬が支払われますが、それ以外の通常発表で報酬が支払される事はまずありません。彼らが受け取るインセンティブは「名誉」と「尊敬」のみです。(勿論、素晴らしい研究発表をした場合だけですが…。質疑応答でけちょんけちょんにされて「不名誉」が報酬になるケースだって中にはあります…^^;) 考え方によっては「医は仁術。名誉が最高の報酬」という考え方は高潔ですし、間違ってはいないと思います。それに多くの公的研究機関では研究そのものに税金が投入されているので、その成果を広く一般に還元するのは当たり前だという考え方をされています。その一方で学会発表はその準備に非常に多くの時間とお金がかかります。その為、学会発表されずに個人や特定の組織の中に埋もれてしまっている成果やノウハウが多いのも事実です。特に開業医にとって学会での研究発表というのは非常に負担が多いので、臨床を中心としている開業医のノウハウが公開されないままになる事が多いのは残念な事ではあります。そんなこんなで色々な人が色々な思いで学会に集まり、それぞれが情報を交換しつつ医療が発展してきたのは間違いないと思います。そのような意味で学会の果たす役割は今でも非常に大きなものだと思っていますが、最近になって、どうしても学会の会場だけでは得ることのできない情報を収集するのも学会の一つの役割なんだなぁ…と思うようになりました。    通常、学会で発表される研究結果の殆どは病院に来た人のデータで構成されています。例えば癌の研究成果の殆どは癌を治療した人達のデータになります。何にもせずに放置したとか、そもそも病院にすら行かなかった人達に何が起きたのかは知る余地が殆どありません。美容医療の世界でも美容治療に訪れた人達のデータは収集しやすいのですが、何もしなくてもお肌がツヤツヤで、美容医療そのものに興味を持った事もない人達のデータを集めるのは難しいのです。しかし本当は、お肌に何の問題もなく、美容医療に興味すら持っていない人の日常生活のノウハウこそが最も美容効果を上げるものなのかもしれないのです。(本人はあくまでも気づいていないのだが…。)以前、お豆腐屋さんの奥さんのお肌はみんなツヤツヤで綺麗だ…と気づいた人がいて、色々と調べると大豆に含まれるイソフラボンを皮膚から吸収している事が大いに影響しているという研究結果を発表した人がいました。お豆腐屋さんの奥さんは自分ではそんな事は全く気にせずに日常の仕事の一環として豆乳の入った容器に手を入れていたのですが、自然と手の皮膚を通じてイソフラボンを吸収していた訳です。まだまだこのような生活の中に根付いた「生活の知恵」というのか、「昔の人は偉かった…」というような話で科学的に検証されていない事は沢山あると思います。学会に行くというのは学会発表を聞くというだけでなく、遠い土地に行ってその土地の文化や生活や人間を観察し、そのような「その土地に根ざした生活の知恵」を知ることができる最大のチャンスでもある訳です。「だからインターネットがこれだけ普及しても、学会は遠い土地で開催されたところにわざわざ出かけていく価値があるんだな…」って思う訳です。 もっぱら「その土地の美味しいもの…」にしか興味がない訳ではないのだ!という言い訳をしながら、9月は1週間もクリニックをお休みさせていただき、皆様にはご迷惑をお掛けして申し訳ございません。何かまた新しくお役に立てる事を報告しますので、ご理解いただけますようお願いいたします。    

第114回  (2012年09月)  「草食系男子のサバイバル」

こんにちは。柴田美容皮膚科クリニックの柴田です。今年もやっぱり暑いですね・・・。本当にいつまでも暑いですが、皆様は夏バテなどで体調を崩しておられないでしょうか? しっかり水分を取って、外出の時には日傘と日焼け止めをお忘れなく。 今年はクリニックの夏休みと私の卒業した大学の卓球部の合宿が重なったので、年甲斐もなく合宿に参加してしまいました。和倉温泉の旅館が合宿の宿だったので、久しぶりに温泉もいいな・・・と思ったのですが、これが大失敗。学生の合宿所になる旅館なので期待はしていませんでしたが、学生の間では評判のいい宿で、ホームページの写真も綺麗だったので、これならまだいいかなと思ったのです。   ところがどっこい・・・宿はホームページの写真とは大違い。しかも節電で冷房が全然効いてなくて、暑くて暑くてしょうがない。文句を言っても扇風機を持って来るだけで、冷房は一向に効きません。普段はずっと冷房の効いたところにいるので、これは参りました。おまけに一人部屋だったので一般料金を払ったのに、食事は学生と同じ合宿用。海の近くなのにお刺身も出ず、まずいフライ物ばかり。こんなん騙しやん!(しかしこんなに綺麗にホームページを制作する会社があるのには驚きました。確かに現実にある部屋や温泉の写真なんですが、ここまで綺麗に撮れるものなのかと・・・多少修正しているかもしれませんが、それでも全体として現物の5倍は綺麗でお洒落な印象を与えています。この会社だけはプロだ!って変な所で感心しちゃいましたが。)料理が合宿用だったら料金が安くなるはず、と旅館に文句を言っても「シングルユースなので割高になるんです」とごまかされるし。ビール1本800円もするし、お土産もめちゃ高いし、ほんまぼったくり旅館やん。皆様、和倉温泉に行かれる時はD荘だけは避けましょう・・・^^;)。その上、行き帰りの電車では窓が大きかったせいか直射日光に当たってないのに日焼けしてしまってぐったり。帰ってから慌ててプラセンタとビタミンを大量に入れた点滴とローションで手当しましたが、普段日光を浴びてないと肌も敏感になりますね。まぁ・・・他にも色々あって散々な合宿でした。(しかしそのお陰でUV対策点滴とローションを思いつきました。こういう仕事をしてると、転んでもタダでは起きなくなりますねえ・・・(^^)。)    しかし、面白い発見もありました。合宿の夜、学生たちの部屋で飲み会をしたんですが(旅館のお酒は高いので、私の差し入れのお酒とコンビニで調達したビールとつまみで)、ハゲの話題で盛り上がったんですねえ。十数人集まった学生の中で、なんと3人もM字ハゲを気にしてる子がいたんです。3人ともお父さんがハゲてるので悩みは深刻。こんなに若くてもハゲを気にしてる子が多い事が判り、「ぜひ育毛の研究をしてください」と頼まれて、真剣に研究してみようかな・・・^^;)と思ったくらい。そう言えば先月参加した細胞再生医療研究会でも、「毛髪は蘇るのか」という講演があり、普段からクリニックで事あるごとに「ハゲ」とからかわれているS君はかぶりついていましたねえ。最近では自分の毛包細胞を培養して移植する再生医療も研究されているそうです。女性はホルモンの関係から男性のようなハゲは殆どなく、もっぱらハゲは男性の心配事なんですが、こんなに若者の間でハゲを心配している人が多いとは思わなかった・・・。確かに男性はハゲると一気に老けて見えちゃいますね。女性が肌のハリを気にするのと同じレベルで、男性諸氏の間ではハゲが気になるというところでしょうか。     私はもっぱら肌の方に感心を持っていた為にあまり男性のハゲを気にしたことがなかったのですが、彼等と話をしてから街を行き来する男性を眺めてみると、確かに「若いのに髪が薄い人」が数十年前に比べると圧倒的に増えたような気がします。もっともそんな統計がある訳ではなく、あくまでも私の感覚に過ぎませんけど。医学的に考えるとハゲは男性ホルモンに大きな影響を受ける事から、男性ホルモンが多い人ほどハゲやすいと言われてます。女性がハゲない理由は男性ホルモンが少ないから。逆に男性ホルモンが多いと髭は濃くなるのにハゲは進む。そう言われてみると、昔アメリカなどで真っ赤なオープンカーに乗っている親父は「ハゲ+髭」のマッチョなナルシストと相場が決まっていたような気がするなぁ・・・(^^)。ただ、おかしな事に草食系男子が増えていると言われるこの現代、男性ホルモンがいかにも少なそう・・・なひ弱な若者も若ハゲに悩んでいるように思うんですよね・・・。卓球部の合宿でも若ハゲに悩む若者はとても男性ホルモンがギラギラのマッチョとはほど遠い子達だったし。 話は全然変わりますが・・・この前久しぶりにテレビをつけると、色々な会社の社長さんを集めて来て、その名物社長と会社をお笑い芸人が中心に紹介するというバラエティ番組をやってました。ちょうどスイッチを入れた時にあまりにもインパクトのある映像が飛び込んできたので、思わず見入ってしまったんです・・・。その社長さんは中古のブランド品とか海外から直輸入でブランドものを仕入れて格安で販売している会社をやっているようなんですが、もうそんな会社の事はどうでもよくて、インパクトはその髪型なんです。今時ありえない山盛りリーゼントで、30年前に出てくる漫画のキャラクターみたいなんですよ。(もし皆さんも興味があれば「リーゼント 社長」でGoogleの画像検索をしていただければ、私がどれだけ仰天したか解って貰えると思います・・・(^^)。)一応その番組ではその会社の仕事内容を紹介する仕立てにはなっていますが、絵面があまりにも良い為か、話題はもっぱらその髪型が中心になっていました。その中でその社長さんに「どうしてそんな髪型にしてるんですか?」と出演者から質問があると、社長さんの答えは「私は昔は薄毛で凄く悩んでたんです。このままではハゲてしまうと思って、とにかく髪の毛が増えると言われる事はすべて行いました。するとどんどん髪が生えてきて、頭の上に向かって毛が生えてきたもんで、最初は伸びるに任せていたのですが、長くなってきたのでこうやってまとめてリーゼントにするようになったんです」との事。まぁ・・・存在そのものが宣伝用のチンドン屋みたいなキャラの人なんで、嘘かホントかわからないですし、そのまま信用する気にはなりません。ただ彼の言った最後の一言だけがどうしても耳に残りました。「髪の毛が増えるって話があればなんでもチャレンジしましたよ。公園に行ってそこにいる全員の浮浪者も観察しました」・・・ここで発言終わり。なんかその先があったのかもしれませんが、編集でカットされたのかも。私としてはなんか納得できません。「うん? 公園の浮浪者? それと薄毛対策と何の関係があるわけ?」 そのテレビ番組はそんな私の疑問にはお構いなしに次々進んでいくのですが、私の頭の中はこの公園の浮浪者のクエスチョンでいっぱいになり、もう番組を見る気がしません。そこでテレビのスイッチをオフにしてしばしの思考実験です。あまり映像としては良いものではありませんが、公園にいる浮浪者の皆さんを記憶の限り思い浮かべてみます。(あんまりジロジロみた事がないので、なかなか思い出せなかったのですが・・・)薄毛・浮浪者・薄毛・浮浪者・・・なんか相関関係あったっけ? そして「あっ!!!」っと思いつく事が。そう言えば浮浪者の人でハゲてる人って見たことないな、と。大体、お風呂にも殆ど入ってないくらいだから髪の毛のケアなんて全くしていないと思われるし、その頭皮の状態たるや想像を絶するような状況になっているに違いない・・・でも誰もハゲてない・・・なんで??う・・・む。そんな事を考えていると、またまた自分の中にある「気になって仕方ない」虫がむずむず湧いてきます。さっそくネットで調べると、もうすでに多くの人がその事に気づいて話題にされているのですねぇ。ネットの質問コーナーとかにも「なぜ浮浪者の人にハゲは少ないのですか?」みたいな質問が沢山挙がっています。その中の一つに非常に説得力がある?回答があったので、長くなりますが引用させてもらいます。 「ハゲた浮浪者は、浮浪者になる前にハゲた方達でしょう。毛が抜ける程のストレス社会に耐えきれなくなって、ドロップアウトしたんだと思います。そんな人達は都市部に多く見掛けます。モンゴルの遊牧民やアマゾン奥地の原住民で若ハゲになる人はまず居ません。これらの人達は風呂に入る習慣が無いのにハゲません! つまり、頭皮の汚れとハゲは一切関係無いという事です。動物も良い例ですね。むしろシャンプーするからハゲると言っても過言ではないでしょう。ハゲは都市化が進んだ国の人達がなる病気です。やれ仕事だエチケットだ流行だのと他人に気を遣い、ごく普通の日常生活の中でストレスに侵されているのです。ケータイやPCなど、直近の一点を長時間凝視する行為も頭皮にとってはストレスです。先述の人達(ホームレスも含む)の様に、自然の中で、自然に則したストレスの少ない生活をすれば、ハゲる事は無いのです。」 —-Yahoo知恵袋より どうです? 学術的な根拠はともかくとして、非常に興味深い仮説だと思いませんか? 私もこの分野は専門でもなく勉強不足もあり、なんら医学的な根拠を持ってお話できるような状態ではありません。でもなんとなく、清潔でオフィスワークをしているひ弱な草食系男子がどんどんハゲていき、現代のジャングルとも言うべき公園でサバイバルをしている浮浪者の方の髪の毛がどんどん伸びていく事が、自分の頭の中であまりにもしっくり来ちゃんですよね。論理的な説明はできないんですが、「ああ・・・あり得るね!」って感じです。そう言えば私の知ってる人でハゲてる人って頭のいい人が多いんですよね。これも単なる偶然なのかしら・・・。 これだけ科学が進歩して、ウランの原子核に中性子をぶつけてバラバラにした時に発生するエネルギーを利用できる時代に、人間の体なんて本当に謎だらけなんですよね。人間が病気を克服する歴史は栄養学の進歩と衛生概念が進んだ事によって築かれたと言っても過言ではないと思いますが、衛生概念が広まると今度はアトピーのような別の問題が出てくるようになってきました。空調もよく効いた、清潔で快適な高層オフィスで働くサラリーマンの皆さんが、今度は若ハゲで悩むようになるのかな・・・と思ったりします。    今回の通信はなんだかハゲの話一辺倒でS君に怒られそうですが、私の中ではハゲに拘りがあるのではなく、美容医療という分野でも「現代という一見快適で清潔な生活」が新たな問題を引き起こしている事が多いな・・・と思っていた事とハゲの原因の仮説に、何か共通したものを感じたんです。化粧品にかぶれ易い人や何らかのアレルギーを持っている人は10年前よりも明らかに増えていますし、最近特に多い気がします。スキンケアは大抵の場合私もお勧めしますが、肌がボロボロになったと悩む人の中には過剰なスキンケアが原因の人もいます。綺麗に洗顔しようとして擦りすぎてお肌を傷めている人も多いですし、肝斑というシミは擦りすぎが原因である!と断言している有名な先生もいます。泥パックなんかが一時期流行りましたが(今でも根強い人気がありますね)、そもそも泥を顔につけるという発想がどこから来たのかというと、昔の生活の中で土を触っている人の方が肌の状態が良い人が多かったのではという考察から来ています。(土の中に含まれる天然の微生物が肌に良い影響をもたらしていたという説ですね。)皆様も病院で抗生物質を処方された事があると思います。抗生物質は細菌に対してよく効くのですが、その反面、人間の中に生息して良い影響を与えていた微生物まで死に追いやる事が多く、下痢をしたりお腹の調子が悪くなるという副作用が多く見られます。私は整形外科出身で、整形の骨や関節の手術では細菌に感染するとなかなか治らないため清潔にはものすごく気を使うので、感染の怖さを知っているせいか注射前後の清潔には他のクリニックよりもずっと気を使っていると思います。しかし手術や注射という特別な場合を除く普段の生活においては、私達も清潔一辺倒から人間により良い影響を与える微生物との共存って事をちゃんと考えていかなければならないなと思っています。これは今後の私の重要な研究テーマの一つです。まぁ・・・何年かかるか分かりませんが、気長に取り組まなきゃ。    

第113回  (2012年08月)  「ゆく河の流れは絶えずして 」

こんにちは。柴田美容皮膚科クリニックの柴田です。最近はとっても暑くなってきましたね。私も毎朝蝉の声で目が覚めるようになりました。梅雨もすっかり明けて本格的な夏の到来ですが、夏のレジャーには日焼け止めをお忘れなく。当クリニックの患者様でも肌年齢が実年齢より随分と老けこんでしまった方の大半は、日焼け対策を怠った事と喫煙が影響しているように思います。いつまでも若い肌を維持する為にも是非、SPF40以上、PAやPPD値が高い日焼け止めクリームを使ってくださいね。(皆様ご存知の通り、SPFはUVB(紫外線B波)、PAはUVA(紫外線A波)の防御力の指標ですが、EU圏ではUVAの防御力の指標にPPDという値を使います。 PA+++はPPD8以上ですが、 EU圏ではPPD18~38のものもあります。UVBはシミの、UVAはシワ・たるみの原因になると言われていますから、シワ・たるみを防ぐには、PPDの高い日焼け止めの方がいいという訳ですよね。)   ところで、若さを維持したいという願いは何もお肌に関してだけではなく、心身ともに「若さ」を維持したいと願う人は年々多くなって来ていますね。私も先日、抗加齢医学会に参加してきました。アンチエイジングは今や時代の潮流に乗っているようで、驚くほど参加人数の多い大きな学会です。「健康長寿」から「見た目のアンチエイジング」まで多くの講演があり、いろいろなサプリメントが話題になっていました。「グルコサミン長期摂取は全死亡率を低下させる」「ウコンの主成分クルクミンは動脈硬化や疲労・色素沈着を防ぐ」「コーヒーポリフェノールはシミを改善する」「紅藻エキスはエラスチン線維形成を促進し、たるみを改善する」など最新の研究結果が発表されていましたが、あんまり沢山あり過ぎて何がなんだか分からなくなりそうです。いろいろな情報を得る事ができましたが、美容に関係する演題の会場はいっぱいで、入りきれないほどの人気でした。これも本当に時代の流れですね。少なくとも20年位前にはアンチエイジングなんて言葉すら聞いたことなかったですし、この10年位で抗加齢医療も大きく流れが変わったように思います。    今回は普段はあまり聴かない運動器における抗加齢研究に関する講演の中に、整形外科時代の後輩が発表しているのを見つけたので運動器関連の講演をいくつか聴いてしまいましたが、それが結構面白かったのでちょっと紹介しますね。脊椎(背骨)の変形や可動性とQOL(=Quality Of Life:生きている間の生活の質が重要という考え方。 質を重視しない延命治療に対する疑問もここの観点から議論されていますね)の関係の統計をとると、変形よりも可動性の方が重要で、脊椎が変形しても可動性や背筋力が保たれているとQOLが保たれ、寿命も延びるそうな。つまり背骨の動き、特に背屈(背中をそらす動き)と背筋力が歩行障害や転倒の予防には重要だそうで、背筋を鍛える運動と背中をそらす運動が勧められていました。また、歩行速度と寿命の関係を研究した発表もあり、75歳で歩行速度が早い人はその後の10年で87%生存していたが、歩行速度の遅い人の生存率は30%以下だったそうで、筋力が寿命にかなり関係があるという事でした。確かに年をとると背中が丸くなることが多く、それでよけい老けて見えますよね。背筋を伸ばしてさっさと歩くだけで若々しく見えるものです。私もその講演を聴いてから、背筋と背屈運動を始めました。いつまでも若々しくいるためには、美容と健康の両方が必要ですものね。今後そういう研究も少し取り入れてみようかなと思っています。ただ、私の知り合いに言わせると、人間の寿命の大半はDNAに組み込まれているものが影響しているそうで、そもそも長生きをするDNAを持った人は年をとっても筋肉がしなやかな状態を維持できる訳で、早歩きをした結果寿命が延びた訳ではなく、長生きできる人はそもそも歩くのも早いし、脊椎の可動性も大きいのよ…って言ってました。う~ん。確かにこれも一理あるな。     ただ、一つの事実として人間のDNAがこの100年位でそれ程大きな変化をしたとは思えないのですが、先進国の平均寿命はこの100年で少なくとも30%以上は延びている事を考えると、環境(食料事情や労働環境、医療状態など…)が寿命に与える影響はDNA以上にあるという事は認めざるを得ないと思うんです。お肌の問題も確かに肌年齢が衰え易い人とそうでない人がいるんですが、人生の中でどれだけ紫外線を浴びたかとか何年喫煙をしていたかという事は、持って生まれた体質を超える大きな影響を与えているように思います。そう言えば紫外線の問題だって昔はこんなに言われてなかったけど、最近はオゾンホールの影響で地表に届く紫外線は年々強くなっているそうで、オーストラリアなんかでは政府が直接日光浴を規制する動きがあるようです。DNAの変化は非常に遅々としているんですが、人間を取り巻く環境の変化は非常に大きいって事なんですよね。抗加齢医学会がこんなに注目されるようになったのは、日本人の平均寿命が延びて老後の生活がどんどん長くなり、長生きが当たり前となった今はいかに元気で若々しく老後を過ごすか…という事に興味が変わっていったからだと思います。 話は大きく変わってしまいますが、先月は開業10周年を無事迎えることができました。ここまで支えてくださった皆様には本当に感謝に堪えません。10周年記念企画はたくさんの方にご利用いただき、お祝いをくださった患者様や7年ぶりに訪ねてくださった患者様もおられ、「ずっとクリニック通信読んでました」と言っていただいて涙チョチョ切れでした。ああ、10年やってきて、毎月クリニック通信書いてきて良かった…と喜びをかみしめました。感無量、とはこの事です…。私のようなものが自分のクリニックを10年も継続できた事そのものが自分でも驚きなのですが、この10年間を振り返ってみても一時として同じ状態がなく、変化の連続でした。開業当初は異人館通クリニックという名前でしたが、4年前に柴田美容皮膚科クリニックと名前を変えて現在の場所に移転しました。思えば10年前、異人館通クリニックを開設した当初は神戸にも美容のクリニックなんて数えるほどしかありませんでした。世の中には愛想の悪い普通の総合病院か、胡散臭い美容外科しかなかったんですよね。そんな中でまともな美容医療が受けられ、普通の病院よりちょっとはサービスのいいクリニックを作ろうとしたんですが、数年のうちにサービス重視のラグジュアリーな美容クリニックは山のように増えてしまいました。それと共に肝心の「治療効果と安全性の追求」という概念は薄れてきたように思ったので、より安全で確実な効果を出せる治療法を研究開発する研究所兼クリニックを新規オープンした訳です。 時代の変化と共に治療内容もずいぶん変わりました。異人館通クリニックオープン当初はケミカルピーリング全盛期でしたが、美肌治療はCDトレチノイン療法に変わり、シワ・クマ・たるみ治療はより即効性のある注射治療に取って代わりましたし、メソリフト・メソカクテルからエセリスカクテル・PRP、最近ではさらにダウンタイムの少ない新エセリスカクテル・アイリペアカクテル・リフトアップカクテル…と、注射治療もどんどん変遷しています。 この7月から、2年前までアルバイトをしてくれていた中国の留学生Nさんが復帰してくれたのですが、Nさんの復帰によって、わずか2年の間でも新しくなった事がいっぱいあるという事が再認識でき、時代の流れを感じてしまいました。根強い人気のプラセンタ点滴など基本は変わらないものもありますが、それでも点滴の種類は少しずつ変わり、他の治療も常に進歩・変遷を遂げてきました。これらはすべて患者様のご要望を聞き、時代の要求に応えるべく研究開発してきたものです。クリニックの場所も忙しい方にも便利なところに移り、スタッフにもより専門性を求めるようになり、不況の際にはコストパフォーマンスを追求してきました。微力ながら、時代の変化と共に常に変わる努力をしてきたからこそ、ここまで来ることができたのではないかとも思います。クリニックも時代と共に変化しないと存続できなかっただろうな…と思うのです。 異人館通クリニック開業当初はスタッフも接客重視で採用していましたが、それでは専門的なアドバイスを求める患者様のご要望に応えられなくなり、研究好きな私との方向性も異なってしまったので、移転と共に研究所併設のクリニックとし、スタッフも研究員とする事にしました。そうなるとアルバイトでも楽で簡単な仕事ではなくなり、バイタリティーが必要となるので日本の若者はなかなか続かず、留学生を採用する事になりました。開業当初は留学生がアルバイトに来るなんて想像もしなかったのですが、今では留学生の力なしではやっていけないようになっています。(それに引き換え日本の若者の低落というかだらしなさと言ったらもう…目を覆いたくなる状態ですよねぇ。まともな若者は本当にわずかだという気がします。ニートとかパラサイトとか、もうあんなの一掃しなきゃダメですよ。親も親で強制的に生活費を徴収して当然ですし、生活費を入れない子供なんかさっさと追い出して自立させなきゃねぇ…って思うんですが。あ…こんな事を自分が言う年になったのかと思うとちょっと情けないので、これも時代の変化のせいにしておきましょう…^^;) とにもかくにも…時代の変化はかくも激しいということですね。10年一昔という言葉がありましたが、この10年一昔という言葉そのものが古くなってきたようにも思います。最近は1年単位で色々な事が変化しているように思うんです。ただ、こんなに激しい変化の中を自分なりに過ごしてきて思う事があります。それは人間は相当大きな変化にもそれを吸収して自分の生活に取り入れ、より豊かで実りのある人生にしていく能力が生まれつき備わっているんだな…という事です。世の中は変化が激しく、一時として同じではないけれど、その中で一つだけ変わらないものは人間が持って生まれたDNAじゃないかと思うんです。環境の変化の割にDNAの変化が遅すぎるのではないかと危惧していたのですが、よくよく考えるとそれは心配ないようですね。人間は大きな変化を吸収するという柔軟性のDNAを持った唯一の生物なんじゃないかと思うのです。(ゴキブリのように何十万年も前から変化に耐えて生き残っている先輩がいる中で唯一という言い方は語弊がありますが、少なくとも社会の変化に対応する柔軟性は人間しか持ち合わせていないのではないでしょうか…。 )    「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず…」とは、絶えず変化する様子は世の中の無常を表しているという、古文の代表作である方丈記の一節ですが、世の中がいくら変化し、無常と思っていても人間のDNAだけは実は何も変わっていないんですよね。その変わらないDNAこそが、無常に対応し、その変化への対応を楽しむチャレンジ精神の原動力なんだと思います。世の中が変化してもその変化を吸収し、より良いものにするというチャレンジ精神を持つ能力が人間のDNAに備わっているという事実を思えば、無常を感じる事もないのでしょうね。その能力を信じれば、日本の親御さんもさっさとご子息を家から追い出して独り立ちさせる事も厭わないように思うのですが…。(ま…これも時代の変化ですかね…^^;)  10年の節目に、これからも世の中の変化を敏感に感じ取り、その変化への対応にチャレンジする研究を続け、常に時代に要求されるものを開発していきたいと決意を新たにしたのでした。